玉川電気鉄道1372mm4輪単車車両

玉川電気鉄道1号形は、1920年9月11日に玉川電気鉄道（後の東京横浜電鉄）が東京市電気局市内電車線、通称東京市電への乗り入れのために、軌間を1067mmから市電と同じ1372mmに改軌した際に新造されました。この時製造された21両のうち、15両が1号形に分類されます。

概要

玉電1号形は、全15両が愛知県名古屋市にあった名古屋電車製作所で製造されました。車体長は約11メートルで、台車を除く主要構造は木造です。集電方式は1本ポール式を採用しており、終端での折り返し時にはポールを反対側に付け替える必要がありました。窓は1枚下降式で、製造当初はドアのないオープンデッキ構造でしたが、後に一部車両はドア付きに改造されました。

連結器は装備しておらず、純粋な路面電車車両として運用されることを前提に設計された初の車両と言えます。しかし、4輪単車という構造上の制約から大量輸送には不向きであり、輸送力不足が課題でした。そのため、1936年から順次廃車が進められました。

最後に残った3両は、玉電の単線区間であった砧線（二子玉川～砧本村間）専用として運用されましたが、1941年に満州の新京市（現在の長春市）に存在した私鉄、新京交通に譲渡され、形式消滅しました。満州へ渡った車両のその後の消息は明らかになっていません。

ちなみに、残りの6両は玉電16号形として区別され、こちらは木造ボギー車両でした。そのため、東京急行電鉄への合併後も引き継がれ、同社のデハ1形として活躍しました。

1号形は、玉川電気鉄道の歴史において、東京市電への乗り入れという重要な転換期を象徴する車両でしたが、その短い生涯は、路面電車車両の限界と可能性を示唆するものと言えるでしょう。

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