玉緑茶

玉緑茶（たまりょくちゃ）

玉緑茶は、九州中北部で主に生産されている日本茶の一種です。その最大の特徴は、一般的な煎茶のような針状ではなく、勾玉のような丸みを帯びた独特の形状にあります。この形状から「グリ茶」とも呼ばれることがあります。

製法の違い

玉緑茶は、製法によって大きく二つに分類されます。

釜炒り製玉緑茶

釜炒り製法は、日本の緑茶類では非常に珍しい製法です（番茶類では見られることがあります）。この製法は、中国の製茶法が九州に伝わったものとされており、佐賀県の嬉野茶、宮崎県、熊本県の青柳茶などが有名です。かつては抹茶と並び、日本の代表的な製法の一つでした。

製造工程では、直径約1メートルの半球状の鋳鉄製の釜を熱し、そこに茶葉を投入して酵素の活性を失わせます（殺青、失活）。この際、嬉野では釜を45～50度に傾斜させて使用しますが、青柳茶では水平の釜を用いる点が異なります。

蒸し製玉緑茶

蒸し製法は、その名の通り、釜炒りの代わりに蒸気を用いて茶葉の酵素の活性を失わせる製法です。一般的な煎茶の製法にある精揉の工程がないため、勾玉状の形状になります。この製法は、大正末期から昭和初期にかけて、中国茶が好まれていた旧ソ連への輸出を増やすために開発されました。中国の釜炒り茶に似せて作られたものが始まりで、戦後には北アフリカなどへも輸出されました。

蒸し製法は釜炒り製法に比べて効率的に製造できるため、かつて釜炒り製法で作られていた地域でも、蒸し製法に切り替えるところが多数出てきており、現在では釜炒り製法は少数派となっています。

名称の由来

玉緑茶という名前は、その形状が勾玉に似ていることに由来します。1932年に輸出が急増した際、業界で公募によってこの名称が決定しました。

また、「グリ茶」という呼び名にはいくつかの説があります。

丸い形状がグリグリしているからという説
輸出向けに生産された歴史から、グリーンティーが訛ったという説
仏画や寺院に見られる雲の模様「屈輪（グリ）」に形状が似ているという説

さらに、静岡県では「ヨンコン」という別名で呼ばれることもあります。

その他の情報

露地栽培の玉緑茶も存在します。
* 釜炒り茶は玉緑茶の一種でもあります。

玉緑茶は、その独特の形状と製法から、日本の緑茶の中でも個性的な存在として知られています。その風味や香りは、製法によって異なり、多様な楽しみ方ができるお茶です。

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