王・皇帝

王・皇帝（King-Emperor）とは

王・皇帝（おう・こうてい、英: king-emperor）とは、一人の統治者が、ある領土では「王」として、別の領土では「皇帝」として君臨する状態を指します。これは、王国と帝国が合併したり、王が新たに帝国を獲得したりすることで生じることがあります。この称号は、単なる地位の組み合わせ以上の意味を持ち、政治的、文化的な背景を反映しています。

称号の意義

「王・皇帝」という称号は、統治者の二重の役割を示すだけでなく、その威光を高める効果も期待されました。特に、領土の合併においては、一方の国家が他方を吸収するのではなく、対等な立場で統一されたことを示す意味合いがありました。イギリスの君主制の場合、「emperor-king」ではなく「king-emperor」という称号が用いられたのは、皇帝が王よりも上位であるという印象を避けるためでした。

大英帝国の事例

イギリスは、1858年に東インド会社から英領インドの統治権を引き継ぎました。1877年、ヴィクトリア女王はインド女帝の位に就き、「Queen-Empress（女王・女帝）」となりました。以降、ジョージ6世までイギリスの君主は「King-Emperor（王・皇帝）」の称号を使用しました。これは、イギリス王がインド皇帝を兼ねることを示すもので、硬貨にも「Rex Ind. Imp.」という文字が刻印されました。インド独立後、これらの文字は硬貨から削除されました。

オーストリア＝ハンガリー帝国の事例

1867年、オーストリア帝国はハンガリー王国との間でアウスグライヒ（妥協）を行い、オーストリア＝ハンガリー二重帝国が成立しました。これにより、ハプスブルク家はオーストリア皇帝として帝国の西半分を、ハンガリー王としてハンガリー王国を統治することになりました。この二重君主制は、「皇帝・王（Kaiser und König）」という称号に表れています。ハンガリーは一定の自治権を持ち、外交・国防においては共通の代表機関を通じて連携しました。

イタリア植民地帝国の事例

1936年、イタリアがエチオピアを征服すると、ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世はエチオピア皇帝を兼ね、「王・皇帝（Re Imperatore）」となりました。彼は副王を任命し、イタリア領東アフリカ（AOI）を統治させました。しかし、この支配は長くは続かず、第二次世界大戦中に崩壊しました。

その他の事例

セルビア皇帝ステファン・ドゥシャンは、「ギリシアの皇帝ならびに全セルビア諸邦および沿海州の王」と署名し、「王・皇帝」と称されることがありました。また、ドイツ帝国も、プロイセン王を兼ねる皇帝によって統治されました。神聖ローマ皇帝も、イタリア、ドイツ、ブルグントの王を兼ねていました。ナポレオン1世はイタリア王を兼ねましたが、「皇帝・王（Empereur-Roi）」と称しました。

このように、「王・皇帝」という称号は、歴史的な経緯や政治的な思惑が複雑に絡み合って生まれたものであり、それぞれの事例において異なる意味合いを持っていました。

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