王冠 (戴冠行進曲)

戴冠行進曲『王冠』(Crown Imperial)

戴冠行進曲『王冠』は、イギリスの作曲家ウィリアム・ウォルトンによって1937年に創作された管弦楽曲であり、国王の戴冠式に特別に作られたものです。この楽曲は、多くの儀式や式典において演奏される重要な作品と位置付けられており、特にイギリスの文化に深く根ざしています。

歴史と背景

『王冠』はもともと1937年5月12日に予定されていたエドワード8世の戴冠式のために作曲されましたが、エドワード8世の退位により、代わって即位した弟のジョージ6世とエリザベス妃の戴冠式で演奏されることとなりました。この戴冠式は、イギリス国民にとって記念すべき出来事であり、ウォルトンの楽曲はその瞬間を盛り上げるために効果的に使用されました。

1963年には、この楽曲は抜本的に改訂されました。また、ハーバート・マリルによるオルガン独奏版も存在し、ロバート・ガウアーが編纂した『ウォルトン オルガン曲集』に収録されています。オルガン版もまた、多くの演奏者に親しまれているバージョンの一つです。

楽曲の構成

この行進曲は、A-B-A-B-Cという形式で構成されています。始めにハ長調で表現される元気な行進曲の旋律が流れ、ウォルトン特有の長いオルゲルプンクトが印象的です。その後、トリオ部分では変イ長調に移行し、エルガーを思わせるようなテーマが展開されます。特に、この部分はエルガーの有名な『威風堂々』を彷彿とさせる魅力的な楽節が織り交ぜられています。再度ハ長調に戻り、最初のモチーフが再現された後、短くとも勇壮なコーダで締めくくられ、聴衆に強い印象を残します。

特徴と意義

この行進曲は、標準的な行進曲の形式を踏襲しながらも、特徴的な付点リズムが使用されており、ウォルトンのスタイルが色濃く表れています。エリザベス2世の戴冠式においては、姉妹編ともいえる『宝玉と勺杖』が作曲されていますが、式典では両方の作品が共に演奏されることになりました。『王冠』は『宝玉と勺杖』に比べて、より格式張った雰囲気が漂う作品であり、ジャズ的な表現が控えられています。

この楽曲は、儀式や特別なイベントにおいて非常に重要な役割を果たしており、イギリスの国民にとっても特別な意味を持つ作品となっています。ウォルトンの『王冠』は、今後も様々な場面で演奏され続け、文化的な遺産としての位置を確立していくことでしょう。

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