ウィリアム・ウォルトン

サー・ウィリアム・ターナー・ウォルトン：20世紀イギリス音楽の巨匠

1902年、イギリスのランカシャー州オールダムに生まれたウィリアム・ウォルトンは、20世紀イギリス音楽史に輝く作曲家です。ベンジャミン・ブリテン、レイフ・ヴォーン・ウィリアムズらと並び称される彼の音楽は、洗練された旋律と大胆なリズム、豊かな情感で知られています。

華麗なるキャリアの幕開けと初期の成功

音楽一家に生まれたウォルトンは、幼少期から音楽教育を受け、10歳でオックスフォード聖歌隊学校に入学。その後オックスフォード大学クライスト・チャーチ校に進学し、詩人サシェヴァレル・シットウェルや作家シグフリート・サッスーンらと親交を深めます。大学を中退後、シットウェルの家に住み込み、作曲に専念。1922年、イーディス・シットウェルの詩による舞台作品『ファサード』で鮮烈なデビューを飾ります。この作品は、その斬新なスタイルと魅力的な音楽で瞬く間に人気を博し、後のバレエ作品にも発展しました。

多様なジャンルへの挑戦と成熟

『ファサード』の成功後、ウォルトンは精力的に創作活動を続けました。1929年に完成した『ヴィオラ協奏曲』、1931年のカンタータ『ベルシャザールの饗宴』など、オーケストラ作品を中心に数々の傑作を発表。また、映画音楽にも積極的に取り組み、『逃げちゃ嫌よ』（1934年）を皮切りに、14作品以上を手掛けました。中でも、ローレンス・オリヴィエ監督によるシェイクスピア3部作（『ヘンリィ五世』『ハムレット』『リチャード三世』）の音楽は、映画史に残る名作として高い評価を得ています。これらの作品は、演奏会用にも編曲され、現在でも広く演奏されています。

さらに、ジョージ6世とエリザベス2世の戴冠式のために作曲した『王冠』と『宝玉と王杖』といった戴冠行進曲も彼の代表作です。これらは、イギリス王室の威厳と祝祭感を見事に表現した壮麗な作品となっています。

完璧主義者としての遅筆と豊かな音楽性

ウォルトンは、完璧主義者として知られており、その遅筆は有名です。長いキャリアの中で制作された作品数は決して多くありません。しかし、彼の作品は、シベリウスやストラヴィンスキー、プロコフィエフといった作曲家たちの影響を受けながらも、ジャズやラテン音楽など、多様な音楽様式を取り込み、独自の音楽性を確立しました。明晰な調性感と豊かな情感を特徴とする彼の音楽は、新ロマン主義と新古典主義双方の要素を融合させた、独自のスタイルと言えるでしょう。

後世への遺産

1983年に80歳で亡くなったウォルトンですが、彼の作品は21世紀においても演奏され続け、その多くがCD化されています。交響曲、協奏曲、室内楽作品、オペラ、そして映画音楽など、多様なジャンルの作品群は、現在でも人々を魅了し続けています。遅筆で知られた彼の生涯は、決して多作ではありませんでしたが、それぞれの作品に込められた深い音楽性と芸術的創造性は、後世の作曲家たちに多大な影響を与え続けています。

主要作品一覧

ここでは、ウォルトンの主要作品を列挙します。詳細については、それぞれの作品について別途調べることをお勧めします。

管弦楽曲
交響曲第1番
交響曲第2番
ヴィオラ協奏曲
ヴァイオリン協奏曲
戴冠式行進曲『王冠』
戴冠式行進曲『宝玉と王杖』

室内楽曲
『ファサード』
弦楽四重奏曲

声楽曲
カンタータ『ベルシャザールの饗宴』
テ・デウム

映画音楽
『ヘンリィ五世』
『ハムレット』
『リチャード三世』
その他多数

ウォルトンの音楽は、その奥深い表現力と洗練された美しさで、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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