王命婦

王命婦（おうみょうぶ）

王命婦は、平安時代文学の金字塔『源氏物語』に登場する架空のキャラクターであり、その行動や選択が物語の中で重要な役割を果たしています。彼女は藤壺の侍女で、中宮である藤壺から強い信任を受けていましたが、光源氏の執拗な頼みの結果、中宮に光源氏を引き合わせることになります。この行動が、中宮が世間には桐壺帝の子として知られつつ、実際には光源氏の子供を持つことにつながり、後に冷泉帝として知られる皇子が誕生するきっかけとなるのです。

王命婦の背景

王命婦の出自や家系については詳細に示されていないものの、彼女の称号が「王氏の命婦」を指していると解釈されることから、皇族もしくは源氏という賜姓氏族に属する人物であったと考えられます。彼女は藤壺中宮の信任を受けているため、その立場や背景も物語の中で暗示されています。特に、彼女は光源氏と藤壺との関係の媒介者であり、その結果が後の権力構造に大きな影響を与えます。

物語における王命婦の行動

王命婦の初登場は『源氏物語』の第5帖「若紫」であり、彼女は光源氏からの頼みを受け、藤壺中宮のもとへと彼を案内します。この行動が中宮と光源氏との禁断の愛に拍車をかけ、物語の中心的なテーマである愛と権力の交錯を生む礎となります。彼女はその後も光源氏の再度の接触を手助けすることは辞退しますが、光源氏を見つけられないように寝所に隠すなど、密かに支援し続ける姿が描かれます（第10帖 「賢木」）。

その後、冷泉帝の譲位の申し出という事態が起こる際に、王命婦は彼女自身の行動がもたらした結果に注目されることとなります。冷泉帝が自らの出生を知る過程において、光源氏は王命婦にこの秘密を漏らしたのか問い詰めますが、王命婦は心当たりがないと答える場面があります（第19帖 「薄雲」）。

彼女の影響

王命婦の行動は、光源氏の権力の源を形成する上で欠かせない要素となります。彼女の存在が物語の展開に与える影響は計り知れず、特に「臣下である光源氏が実は帝である冷泉帝の実父」という複雑な関係の構築に寄与します。結果として、彼女は『源氏物語』の中で非常に重要な役柄を担っていると言えるでしょう。

最後に

物語が進行し、王命婦は藤壺中宮から許されることになります。彼女が藤壺中宮に対して示した忠誠や気配りが、最後には信頼を回復するきっかけとなります。王命婦の物語を通じて、平安時代の宮廷内の人間関係や権力闘争、そして愛の様相が色濃く描かれています。

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