王室魚

イギリスの王室魚：歴史と現状

概要

イギリスにおいて、王室魚(royal fish)とは、歴史的に国王の所有権が認められてきた特定の魚類を指します。この権利は、中世イングランドにまで遡り、現在でもイギリスの法律において有効なものです。対象となるのは主にクジラとチョウザメですが、法律によってはイルカなども含まれる場合があります。本稿では、王室魚の権利の歴史的背景、現代における運用、イギリス国内の各法域や英連邦諸国における扱いなどを解説します。

イングランドとウェールズ

イングランドでは、1322年の法律「Prerogativa Regis」において、領海で捕獲されたクジラとチョウザメは国王の所有物であると規定されました。18世紀の法学者ウィリアム・ブラックストンも、この権利を王権の象徴として言及しています。ブラックストンは、この権利はデンマーク王やノルマンディー公からイングランド王に受け継がれた可能性を示唆しています。現代では、王室魚が捕獲された場合、バッキンガム宮殿は通常、漁師が自由に処分することを許可するようです。BBCの報道によると、イギリス沿岸でチョウザメが捕獲されるのは稀で、年間6匹程度とのことです。

スコットランド

スコットランドにおける王室魚の権利は、イングランドとは異なる起源を持ちます。中世の座礁鯨の処理から発展したとされています。1999年以降、王室魚の権利と責任はスコットランド政府に移譲され、政府が王室魚に関する処分権を有しています。スコットランド政府は、沿岸警備隊向けのガイドラインを公開しており、その中で王室魚を「鼻先から尾の中部までが25フィート(約7.6メートル)以上の座礁鯨」と定義しています。この定義は、これ以上の大きさの鯨は陸揚げが困難であることを理由としています。25フィート未満の鯨や、全てのイルカ、チョウザメについては、地元当局が処分を決定します。ガイドラインは、発見から処分、費用負担、報道に至るまでの具体的な手順を定めています。

北アイルランド

北アイルランドでも、1971年の野生生物に関する法律で、王室魚とハクチョウの権利は例外として国王に留保されています。

その他の法域

イギリス帝国から独立した国々の中には、過去の法令や判例に王室魚への言及が見られる国もあります。しかし、現在ではこれらの地域で王室魚の権利が認められているとは考えられていません。

アメリカ合衆国

19世紀のアメリカでは、海産物に関する裁判で、王室魚が公共の目的のために王に帰属するものであり、私的な目的で私人に譲渡できないという判例が出ています。

オーストラリア

オーストラリアでは、1890年のイギリスの法律を参考に、海事裁判権を確立しました。その文書では、王室魚に厳密な定義はないとしながらも、チョウザメ、ハナゴンドウ、クジラ、イルカ、サメなどを例示しています。

カナダ

歴史的には、ハドソン湾会社がその領土内での王室魚の権利を有していましたが、後にカナダ政府に譲渡されたとされています。現在、カナダの法律には王室魚に関する規定は存在しません。

ニュージーランド

ニュージーランド最高裁判所は、1911年の判決で、エドワード2世の法律はニュージーランドには適用されないと判断しています。

結論

王室魚は、イギリスの独特な歴史と法制度を反映した制度です。現代においても、その権利は維持されていますが、その運用は、各法域の事情や社会状況に合わせて変化しています。王室魚の権利は、歴史、法律、そして社会の変遷を理解する上で、重要な事例と言えます。

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