王将 (1962年の映画)

映画『王将』の魅力とその背景

『王将』（おうしょう）は1962年に公開された日本の白黒映画で、製作は東映東京撮影所によるものです。この映画は北條秀司の戯曲『王将』を基にした三度目の映画化作品であり、主演は三國連太郎が務めています。本作では、将棋棋士としての成長と家族との葛藤を描いた物語が展開されており、公開当時から高い評価を得ています。

映画の概要

本作は、1947年に発表された戯曲を映画化したもので、当時東映と専属契約を交わしていた三國連太郎が将棋棋士・坂田三吉を演じています。また、主題歌『王将』を歌った村田英雄も出演しており、彼のヒットメロディの映画化を企画していた岡田茂東映東京所長の意図が見えます。村田は映画制作にあたり、当初の意気込みとは裏腹に、撮影中に「仁王の刺青を入れろ」と言われた際には戸惑いを見せたと言われています。音楽は伊福部昭が手掛けており、1955年に公開された『王将一代』に引き続きの参加でした。

物語のあらすじ

物語は明治40年、大阪の天王寺に住む素人将棋指しの坂田三吉に焦点を当てています。彼は将棋に夢中になるあまり、家業の草履作りを怠り、家族との関係が微妙になっていきます。娘の玉枝が一張羅を質に入れ、将棋大会に参加するため資金を手に入れようとする場面など、家族の思いが交錯します。三吉の将棋への情熱は尽きることもなく、家族との約束を破りそうになり、家出をしようとする妻・小春との衝突が描かれる中で、彼は将棋への道をあきらめられない葛藤を抱えています。

将棋大会に出場するも、対局相手の関根七段との試合で千日手の規定において敗れてしまいます。挫折する三吉ですが、やがて相手との戦いを通じて自身の夢を再確認します。物語は続き、時が経つにつれ三吉は専門棋士となり、ついには全日本王座を賭けた対局に臨むことになります。この対局には、坂田の家族も参加しており、母・小春が彼の勝利を祈り続けます。

家族の絆と将棋の情熱

三吉は将棋を介して成長し、ついには名人に名乗りを上げるも、将棋の世界は決して平坦な道のりではありません。将棋界での地位を確立する一方で、妻の小春は病に倒れ、彼にとって大きな試練となります。彼女が最期を迎えた後、三吉は自らの将棋観や生き様について深く考えるようになります。

この作品は将棋をテーマにしただけでなく、家族の愛、夢の追求、挫折の克服といった、人間ドラマが織りなされており、観る者に深い感動を与えます。三吉が語る「将棋盤に王将は二枚あるが、勝ち残るのは一枚だけ」といったセリフには、人生の厳しさを象徴する哲学が込められています。

映画の影響と評価

『王将』は公開当初から高い人気を集め、東映の名作路線の基礎を築く重要な作品となりました。岡田茂自身による必死なリーダーシップが影響し、映画業界全体に影響を与え、多くの続編やリメイクが生まれました。特に、主人公・坂田三吉の成長物語は、多くの観客に感銘を与えました。

まとめ

昭和の日本映画の重要な作品である『王将』は、将棋を題材としつつ、人生の様々な要素を描き出しています。坂田三吉の物語は、夢を追うことの難しさや、家族との絆の大切さを教えてくれます。興味深い人間ドラマを堪能できる本作は、一見の価値ありの名作です。

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