王道の狗

『王道の狗』

『王道の狗』（おうどうのいぬ）は、日本の漫画家安彦良和によって制作された作品で、1998年から2000年にかけて『ミスターマガジン』に連載されました。単行本は講談社のミスターマガジンKCとして全6巻、白泉社のジェッツコミックス、及び中央公論新社より全4巻が出版されており、明治時代の日本、朝鮮、中国を舞台にしています。

概要

本作では、主人公の加納周助が「王道」を追求し、一方で風間一太郎が「覇道」を推し進めるという対立が物語の中心に据えられています。安彦は、この「王道」と「覇道」の対比は読者に理解しやすいストーリーを求められた結果であるとしていますが、両者の立場が明確に分かれることはないとも述べています。特に、作中で登場する陸奥宗光（覇道側）と勝海舟（王道側）の人物像に対して深い考察がなされ、物語の進行とともにその魅力が描かれています。

作品は、明治中期から末期の時代背景を踏まえ、秩父事件から日清戦争、さらに辛亥革命の動きまでを織り交ぜながら、歴史の中で運命に翻弄される人々の姿を描いています。そして、この漫画は2000年に第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞するなど、その acclaimを得ました。

ストーリー

物語は1889年の秋、明治政府が石狩道路建設の労務を行っている中で始まります。自由党員の加納周助と天誅党の風間一太郎が共に脱走し、その後の逃亡生活の中で出会ったアイヌの猟師・ニシテに助けられるシーンから展開されます。加納は、その後、武術家の武田惣角に師事し、柔術の技を磨いていきます。彼が過去の記憶を取り戻しながら、自由党の活動や秩父事件に参加したことが描かれる中で、加納の成長や葛藤が描写されます。

一方、風間は逃亡後に「覇道」に目覚め、明治政府の閣僚に接近することで政治的な野望を広げていきます。物語は、加納と風間の相反する道を辿りながら、二人の出会いや別れが重要な軸となって展開されます。彼らの行動の先にあるのは、時代背景に応じた歴史の動きと、国家や個人の信念の交錯です。

登場人物

• - 加納周助：囚人「壱百五号」。自由党員で王道を志向し、武士としての成長を遂げる。
• - 風間一太郎：囚人「壱百参号」。覇道に目覚め、権力を追求する。
• - タキ：アイヌの娘で、風間との関係が物語に影響を与える。
• - 陸奥宗光：明治政府の重要人物で、覇道の体現者。
• - 勝海舟：彼らを支援する重要な存在。

この作品は、表面的な歴史の流れだけでなく、その裏にある人々の感情や葛藤をも丁寧に描写しており、歴史漫画の枠を超えた深みを持つ作品として評価されています。加納の旅路と風間の道が交錯する中で、二人が望む「道」はそれぞれに異なり、その選択が彼らの運命をどのように左右するのか、深い問いかけがなされています。

書誌情報

安彦良和『王道の狗』は講談社から全6巻、また白泉社や中央公論新社からも刊行され、多くの読者に親しまれています。

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