玖村まゆみ

玖村まゆみ：空から大地へ、そして文字の世界へ

玖村まゆみ氏は1964年、東京都で生まれました。幼少期から活発な性格で知られ、中学、高校時代はバレーボールに打ち込みました。その後、中央大学商学部に進学。在学中は体育連盟航空部に所属し、空への憧れを育んでいきます。

大学卒業後は、その憧れを実現するかのように、航空会社にキャビンアテンダントとして就職しました。空を舞台に活躍する日々を送る一方で、24歳の時、かねてからの夢であった小説家への道を歩むことを決意。航空会社を退職し、新たな人生の幕開けを告げます。

作家への道は順風満帆ではありませんでした。ポルトガルや島根県など、各地を転々とし、創作活動に没頭する日々。生活の拠点を移しながらも、執筆への情熱を燃やし続けました。転機が訪れたのは2011年。法律事務所勤務のかたわら執筆した『完盗オンサイト』が、第57回江戸川乱歩賞を受賞したのです。

この受賞は、玖村氏にとって大きな飛躍となりました。同賞では、女性2人が同時受賞を果たすという史上初の快挙であり、また、15年ぶりの女性受賞者ということもあり、大きな話題を集めました。受賞作『完盗オンサイト』は、高い評価を受け、多くの読者から支持を得ることとなります。

その後も精力的に作品を発表し続け、『凸凹サバンナ』などの長編小説に加え、『小説現代』に掲載された「Duo〜二重奏〜」「むじなタクシー」などの短編作品も発表しています。その作品は、緻密な構成と、巧みな心理描写で知られています。

玖村氏の作品世界は、多様な経験と鋭い観察眼から生まれています。航空会社勤務時代の経験や、各地での生活、そして山歩きやジョギングといったアクティブな趣味を通して培われた感性が、作品に深みを与えています。また、犬の観察など、日々の生活の中での小さな発見も、創作活動の糧となっているようです。

自身の好きな作家として、奥田英朗氏を挙げる玖村氏。その影響は、ユーモラスでありながら、人間の深層に迫る作品群に表れていると言えるでしょう。1995年には、日本列島3300キロメートルを徒歩で縦断するという、並々ならぬ行動力も持ち合わせています。

空を飛び、大地を歩き、そして文字の世界を自由に飛び回る。玖村まゆみ氏は、これからも独自の視点と表現力で、多くの読者を魅了し続けることでしょう。

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