珠瑠美

珠瑠美（たま るみ）は、1949年1月15日に東京都世田谷区に生まれた日本の女優、そして映画監督・脚本家です。出生時の名前は小谷瑠美でしたが、後に映画監督の木俣堯喬（きまた たかよし）と結婚し、本名は木俣瑠美となりました。作品によっては「珠るみ」や「珠ルミ」としてクレジットされています。映画製作会社プロダクション鷹では、取締役を経て代表取締役も務めました。

彼女の家庭は、映画界との繋がりが深いものでした。父の小谷春勇は戦前から日活や東映などで小道具・装飾の仕事に携わり、叔父の渡辺公夫は大映の撮影技師、兄も東映で照明技師を務めていました。また、2歳年下の妹である谷身知子（たに みちこ）も女優として活動しました。

1964年、東京都立千歳高等学校に入学。高校二年次に当たる1965年9月、独立系の成人映画『裸女山脈』で「珠るみ」名義で主演に抜擢され、女優として映画界にデビューしました。同年の別作品では「珠ルミ」表記も見られます。彼女のデビュー時期は、成人映画が黎明期を迎えていた頃にあたります。活動初期には、後に妹となる谷身知子も「邦かほり」の芸名で映画界入りし、姉である珠瑠美の主演作『情事のあと始末』で共演するなど、姉妹で共にポスターを飾ることもありました。

1971年、主演作『好色痴女』を手掛けた木俣堯喬が主宰するプロダクション鷹に入社し、妹の谷身知子と共に同社の専属女優となります。この頃、大手の日活が成人映画路線「日活ロマンポルノ」を開始しますが、珠瑠美はプロダクション鷹製作の作品を中心に、多数の主演を務めることになります。共演の多かった妹の谷身知子は、1973年頃に映画界から距離を置きます。珠瑠美自身も、1974年1月公開の『日本性風俗史 姦通』をもって、一時的に女優活動を休止しました。

約一年間の休止期間を経て、1975年2月に日活製作のロマンポルノ『新・団地妻 売春グループ13号館』で女優として復帰。この作品への主演を機に、日活の人気シリーズである「団地妻」女優の一員となります。以降は、日活やプロダクション鷹が製作し、ミリオンフィルムなどが配給するピンク映画や日活ロマンポルノで、主演や助演を数多く務め、その存在感を確立しました。

1981年、プロダクション鷹製作の『復讐セックス 女が犯す』で映画監督としてデビューを果たし、女優業から監督業へと活動の軸を移します。同年10月公開の神代辰巳監督作『嗚呼!おんなたち 猥歌』へのゲスト出演が、監督デビュー前の最後の出演記録となりました。監督転身とほぼ同時期に、プロダクション鷹の代表であった木俣堯喬と結婚し、戸籍上の名前が木俣瑠美となります。これにより、プロダクション鷹の取締役にも就任し、経営にも深く関わるようになりました。

監督としてはプロダクション鷹製作の作品を中心に、ミリオンフィルムや日活、そしてロマンポルノ終了後のエクセスフィルムなど様々な配給で多数の作品を手掛けました。一部の監督作では、自ら脚本や主演も兼任しています（例：『熟女スワップ 獣ように』）。木俣堯喬や義理の息子である和泉聖治が一般映画へと活動の場を移していく中で、珠瑠美は名実ともにプロダクション鷹の中核を担う監督となりました。1995年には、木俣堯喬からプロダクション鷹の代表取締役を引き継ぎ、経営者としての役割も担います。しかし、1997年頃から監督・脚本活動の記録が途絶え、2002年発売のビデオ作品『媚薬』が最後の記録となっています。夫である木俣堯喬は2004年に逝去しました。

近年、彼女の過去の作品に再び光が当たっています。2000年代以降、山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーやシネマヴェーラ渋谷、ラピュタ阿佐ヶ谷といった映画館で、出演作や主演作が特集上映される機会が増えています。特に神代辰巳監督作品や林功監督作品、初期の主演作などが再評価され、日本の成人映画・ピンク映画史における珠瑠美の功績が改めて見直されています。

このように、珠瑠美は成人映画界の黎明期から日活ロマンポルノ時代を経て、監督・脚本家、そして映画製作会社の経営者として、多岐にわたる活動を展開しました。そのキャリアは、日本の性愛映画の歴史と深く結びついています。

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