環濠都市

環濠都市とは

環濠都市とは、都市の周囲に堀を巡らせた都市形態を指します。この堀は、単なる景観としての要素だけでなく、外敵の侵入を防ぐための防御施設としての役割や、都市内の排水を円滑に行うための排水濠としての機能も兼ね備えていました。環濠都市は、世界各地で見られ、その地域や時代によって様々な形態が見られます。

環濠都市の機能

環濠都市における堀の主な機能は以下の通りです。

防御機能: 堀は、外敵の侵入を阻止する役割を果たします。特に、徒歩での侵入を困難にし、騎馬隊などの侵攻を遅らせる効果がありました。また、堀と土塁を組み合わせることで、防御力をさらに高めることができました。
排水機能: 堀は、雨水や生活排水を効率的に排出する役割も担っていました。特に、湿地帯や低地に位置する都市では、洪水を防ぐために重要な機能でした。
交通路: 堀は、舟運に利用されることもありました。特に、物資の輸送や人員の移動に役立ち、都市の発展を支える役割も担っていました。

世界の環濠都市

環濠都市は、世界各地に存在します。代表的な例としては、以下のような都市が挙げられます。

アンコール・トム（カンボジア）： 広大な堀と城壁に囲まれた都市遺跡。その壮大さは、多くの観光客を魅了しています。
ベニンシティ（ナイジェリア）： 大規模な環濠と土塁を備えた古代都市。その遺構は、アフリカの歴史を物語っています。

日本の環濠都市

日本においても、環濠都市は各地に存在しました。代表的な例としては、以下のような都市が挙げられます。

金沢： 加賀藩の城下町として発展した金沢は、城の周囲に堀が巡らされています。現在でも、その一部が残っており、歴史的な景観を形成しています。
今井（奈良県）： 自治都市として発展した今井は、環濠の一部が現在も残っています。その町並みは、歴史的な風情を色濃く残しています。
堺（大阪府）： 中世に自治都市として発展した堺は、「堺環濠都市遺跡」としてその名残を見ることができます。環濠の跡が、当時の都市の様子を伝えています。
尼崎： 城下町として発展した尼崎も、かつては環濠に囲まれていました。現在では、堀の一部が公園として整備されています。
平野郷（大阪府）： 自治都市として発展した平野郷は、「平野環濠都市遺跡」として知られています。その遺構は、中世の都市計画を知る上で貴重な資料となっています。

環濠都市の起源

日本の環濠都市の起源は、弥生時代の環濠集落に遡ることができます。弥生時代には、集落の周囲に堀を巡らせた集落が各地に見られ、その名残が後の環濠都市へと繋がっていったと考えられています。

関連用語

城郭都市: 城を中心に発展した都市のこと。環濠都市と共通する要素も多い。
環濠集落: 弥生時代に見られた、集落の周囲に堀を巡らせた集落のこと。
寺内町: 寺院を中心に発達した都市のこと。寺院の周囲に堀や土塁を設けたものもある。
平城: 平地に築かれた城のこと。環濠を持つものもある。
惣構: 都市全体を囲むように設けられた堀や土塁のこと。環濠都市の重要な構成要素。
内惣構: 都市の中心部を囲むように設けられた堀や土塁のこと。

外部リンク

大阪平野における戦国時代の環濠自治都市に関する研究(PDF)
堺市ホームページ堺環濠都市遺跡

環濠都市は、防御や排水など、様々な機能を持つ都市形態であり、その歴史は古く、世界各地に見られます。日本においても、弥生時代から近世にかけて、各地で環濠都市が建設され、その一部は現在もその名残を残しています。

もう一度検索