甕

甕：多様な用途と歴史を持つ容器

甕の定義と分類

甕は、ふくらんだ胴と広く浅い口を持つ、陶器や金属製の容器です。古くから飲料水の貯蔵、調理、発酵、化学反応など、幅広い用途に使用されてきました。日本語では「瓶」や「かめ」とも表記されますが、「壺」と区別が難しい場合もあります。

考古学では、土器の立面図を九等分し、胴部と頸部の接する部分の幅が全体の3/2以上のものを「甕」、それ未満を「壺」と分類する目安が用いられています。これはあくまで便宜的な分類であり、現場や報告書では異なる呼称が使われることもあります。縄文土器では、くびれのあるものは「深鉢」と呼ばれることが多いです。「埋め甕」や「甕棺」といった呼称も広く使われています。

各地の甕

ギリシャ

ギリシャでは、光沢のある釉薬をかけた壺や鉢、甕が作られていました。

フランス

フランスでの陶器生産は12世紀に始まり、壺、甕、施釉煉瓦、タイルなどが作られました。

中国

中国では、口の大きいものを「罐」と総称し、日本の甕や一部の壺も含まれます。「瓮」は「甕」の簡略字です。「甖」は甕類の総称とされますが、御櫃として使われたものもあったようです。

日本

日本には、大型の道明寺瓶、小型の酢瓶、寸胴型の半胴瓶など、様々な種類の甕があります。常滑焼では「半胴」「半銅」「半戸」「半ト」、瀬戸焼（赤津焼）では「飯胴」などの名称が用いられました。沖縄の泡盛や九州の焼酎の仕込みにも現在も甕が使われています。19世紀には、薩摩の福山で薩摩焼の甕が黒酢の発酵に使われました。

笠間焼

笠間焼では、甕や摺り鉢などの日用雑器が作られ、江戸に近いという利点を活かし、幕末から明治時代にかけて大量生産されました。明治時代には、厨房用粗陶器の産地として知られていました。

常滑焼

常滑焼では、甕は中世を代表する器種であり、12世紀から継続的に生産されてきました。

甕の用途

甕は、多様な用途に使用されてきました。代表的なものとして、水甕、酒甕、便所甕、藍甕、骨甕などがあります。

まとめ

甕は、その形状や名称、用途、地域性において多様性を示す、歴史と文化を反映した重要な容器です。考古学的な分類から、各地での生産と使用、そして現代における活用例まで、その広がりを理解することで、歴史や文化への理解が深まります。 様々な文化圏で独自の発展を遂げ、人々の生活に深く関わってきた甕は、これからもその存在感を示し続けることでしょう。

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