甘夫人

甘夫人（かんふじん）

甘夫人は、三国時代の蜀漢における重要な人物であり、先主劉備の側室として知られています。生没年は詳らかでないものの、彼女の名は歴史を通じて色々な形で言及されています。彼女は豫州沛国出身で、劉備の即位前から彼と関係を持ち、蜀漢の第2代皇帝、劉禅の母としても知られています。劉禅が即位した際には、甘夫人は皇后の位を追贈され、甘皇后と称されることもありました。

生涯

甘夫人の人生は、劉備が豫州刺史として小沛に移住した興平元年（194年）に始まります。同年に彼女は劉備の側室となりました。劉備は何度も正室を亡くしたため、甘夫人は正式な妻にはなれませんでしたが、最も長く彼と共にいたため、その家庭の事務を指揮しました。

建安12年（207年）には劉備と共に荊州に赴き、同年彼女は劉禅を出産しましたが、翌年には曹操の軍に追われる事態に見舞われました。劉備は自らの逃走に専念するため、甘夫人と幼い息子を置いて逃げました。しかし、彼らは趙雲の保護を受け、無事に難を逃れました。その後、甘夫人は不明な時期に亡くなり、その遺体は南郡に埋葬されました。

章武2年（222年）には、彼女は皇思夫人として皇帝の恩恵を受け、益州に移葬されることが決まりましたが、彼女の遺体がまだ到着しないうちに劉備が亡くなり、劉禅が即位しました。そのため、諸葛亮は甘夫人の諡号を検討し、最終的に彼女を昭烈皇后と称し、劉備と共に恵陵に合葬しました。しかし、厳密には「昭烈」は彼女自身の名ではなく、劉備の皇后としての地位を表すものとされています。このため、甘夫人は「甘皇后」と記載されることが一般的です。

人物・逸話

甘夫人は、非常に美しい容姿を持っていたと言われ、貧しい家に生まれ、18歳の時に劉備の妾となりました。彼女の美しさは『拾遺記』でも評判で、白玉のような肌を持っていたと伝わります。ある時、河南の人が劉備に三尺の玉人を献上した際には、劉備は玉人を甘夫人のそばに置き、自身は両者を愛でるようになりました。しかし、甘夫人はこれを見て、玉人が壊れることを望み、劉備に忠告をしました。この過程で甘夫人は「神智婦人」と称賛され、多くの人々から尊敬されました。

明清時代に発表された『歴代百美図』や『百美新詠図伝』では、彼女は中国最も名高い美人百人の一人に選ばれています。

三国志演義

三国志の演義でも甘夫人は重要な役割を果たしています。特に、官渡の戦いの前に関羽が投降する条件として、彼女の命の安全を約束しています。その後、関羽が甘夫人を連れ、荊州に向かう際には山賊に捕まる事件も発生しましたが、廖化の助けを受けて無事でした。長坂の戦いにおいても逃亡に成功し、彼女の人生には多くの波瀾がありました。

彼女の死後、周瑜が劉備のために孫夫人との婚姻を提案する場面でも、甘夫人の存在は強く意識されており、時代を超えて人々の印象に残る女性であったことが伺えます。

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