産業カウンセラー

産業カウンセラーとは

産業カウンセラーとは、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する民間資格、およびその有資格者のことです。働く人々が抱える問題を、心理学的な手法を用いて自力で解決できるよう支援する専門家です。その活動領域は、「メンタルヘルス対策への援助」「人間関係開発への援助」「キャリア開発への援助」の3つに大別されます。

資格の変遷と概要

1992年から2001年までの間、産業カウンセラー試験は旧労働省認定の技能審査であり、公的資格としての側面を持っていました。しかし、2001年以降は技能審査から除外され、現在は完全に民間資格となっています。

産業カウンセラー資格は、心理職の国家資格である公認心理師をはじめとする多くの心理学関連資格の中でも、比較的知名度が高い資格の一つです。しかし、取得難易度は、大学院修了を要件とする臨床心理士などの資格に比べると緩やかであり、学歴不問で受講できる養成講座を修了することで、最短半年で受験資格が得られます。また、合格率も60%以上と比較的高いのが特徴です。

受験資格と試験内容

受験資格は、心理学関連の大学卒業者、または産業カウンセラー養成講座の修了者に与えられます。試験は学科試験と実技試験で構成され、それぞれ6割以上の得点で合格となります。

学科試験: カウンセリングに関する基礎知識や事例への対応能力、傾聴技法などが問われます。
実技試験: 受験者同士によるロールプレイ形式のミニカウンセリングと口述試験が行われます。

試験には、一部合格による免除や、養成講座での実技能力評価による免除制度も存在します。

名称に関する注意点

「産業カウンセラー」は資格名であり、「スクールカウンセラー」や「キャリアカウンセラー」のような職業名ではありません。産業精神保健分野で活動する心理カウンセラーは、「企業内カウンセラー」などの職業名で呼ばれることが一般的です。また、産業カウンセラー資格が、産業精神保健分野での活動に必須というわけではありません。

歴史

産業カウンセリングの起源は、1958年頃に国際電電や電電公社などのカウンセラーや人事労務担当者が集まり、産業カウンセリング研究会が開かれたことに遡ります。1960年には日本産業カウンセラー協会が誕生し、1970年には労働大臣の許可を得て社団法人となりました。当初は調査・研究・啓蒙が中心でしたが、次第に養成・訓練・資格試験にも注力するようになりました。

現状と注意点

産業カウンセラー資格は知名度が高い一方で、カウンセラーとしての求人数は限られています。資格取得者のうち、実際にカウンセラー職に就いているのは一部に過ぎず、資格取得が就職に有利に働くとは限りません。資格取得によって得られる収入も、養成講座の受講料に見合うとは限らない厳しい現実があります。

しかし、在職者がキャリアアップやスキルアップのために取得を目指す資格としては、比較的取り組みやすいとされています。資格取得を通じて、日常の人付き合いで自分や他者の言動に注意するようになったという声も多く聞かれます。

在職者が資格を取得する際には、二重関係（多重関係）に陥らないよう注意が必要です。企業内でのカウンセリングは、既存の関係性がカウンセリングに悪影響を及ぼす可能性があるため、原則として禁じられています。在職受験者は、他の労働者の心の不調に早期に気づき、専門家への橋渡し役を担うことなどが期待されています。

キャリアコンサルタントとの類似

国家資格であるキャリアコンサルタントと産業カウンセラーは、習得知識や技能範囲が重複しており、明確な線引きが難しい現状があります。

まとめ

産業カウンセラー資格は、働く人のメンタルヘルスを支援するための知識やスキルを学ぶ上で有用ですが、資格取得後のキャリアパスや収入面については、慎重な検討が必要です。在職者が資格を取得する際には、倫理的な問題にも十分配慮する必要があります。

関連情報
日本産業カウンセラー協会
臨床心理士
* キャリアコンサルタント

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