用明天皇職人鑑

用明天皇職人鑑について

『用明天皇職人鑑』は、近松門左衛門の名作であり、宝永2年（1705年）に初演された人形浄瑠璃です。この作品は、竹田出雲の脚本に基づいており、近松の代表的な作品の一つとして認識されています。また、有名な『曽根崎心中』が広く知られるようになったことがきっかけとなり、竹本義太夫の引退を引き止める形でこの物語が誕生しました。

作品は、上演の際に必要な楽譜が失われて長きにわたり途絶えていましたが、近年、大阪で三段までの楽譜が発見され、その復元を経て2009年には紀尾井ホールで再び上演されることとなりました。

物語のあらすじ

物語は、後に用明天皇と名を改める花人親王を中心に展開します。彼は仏教に対する深い信仰を抱えており、その影響力が描かれる一方、同じく敏達天皇の子である山彦王子とは信仰の立場から対立します。この二人の王子の間には、仏教を支持する花人親王と、廃仏派として知られる山彦王子という構図があり、彼らの対立は物語の中核を形成しています。最終的には、信仰の違いにより花人親王が山彦王子を拒絶していく過程が描かれています。

聖徳太子との関わり

特に興味深いのは、主人公が聖徳太子の父であるという伝説に基づいている点です。この作品は、用明天皇の人物像を通じて聖徳太子に関連するエピソードを取り入れており、物語の結末には花人親王と玉世姫との間に生まれた子が聖徳太子であるという結論が示されます。玉世姫は、大分県に伝わる『真名野長者伝説』が元になっており、彼女は一般には「般若姫」として知られています。

興味深いことに、玉世姫の子は父親である用明天皇に会えなかったものの、聖徳太子だとする異説も存在しており、近松門左衛門はその伝説を再構築した作品であるといえます。彼の作品において、そのような伝承を用いることで、仏教と皇室とのつながりを強調し、物語全体に重層的な意味を持たせています。

まとめ

この『用明天皇職人鑑』は、近松門左衛門の優れた作品の一つとして多くの人に愛されています。仏教をめぐる対立や人間ドラマを軸にしながら、聖徳太子との関係を通じて日本の歴史に深く根ざした物語が展開されています。人形浄瑠璃の独特の形式が、この物語にどのように寄与しているかを考えることも、大変興味深い要素となるでしょう。

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