田中登

田中 登（たなか のぼる）について

田中登は、1937年8月15日に長野県白馬村に生まれ、2006年10月4日に69歳で他界した日本の映画監督です。彼は日本の映画界、特にロマンポルノの分野に多大な影響を与えた人物として知られています。

経歴

田中は長野県大町高等学校を卒業後、明治大学文学部仏文科に進学します。在学中には黒澤明の名作『用心棒』にアルバイトとして参加し、映画制作の現場を経験しました。その後、1961年に日活に入社し、厳しい競争を勝ち抜いて演出部に所属。映画文化に情熱を注ぎ、「ムッシュ」というニックネームが付けられるほどフランス映画に魅了されました。

1972年、田中は『花弁のしずく』で監督デビューを果たし、その後も多くの作品を発表しました。特に1973年の『㊙女郎責め地獄』は、彼と美術監督の川崎軍二とのコラボレーションにより、グロテスクでサイケデリックな映像美が高く評価され、この作品で日本映画監督協会新人賞奨励賞を受賞しました。田中アンド川崎のコンビは、その後も数本の作品を手掛け、多くが「キネマ旬報ベスト・テン」に選ばれるなど、商業的にも成功を収めました。

映像へのこだわりは特異なもので、『発禁本「美人乱舞」より 責める!』では、過酷な環境でのロケを敢行。氷の張った沼に潜り込み、主演の宮下順子を極寒の中で撮影したエピソードが語られています。この作品に対する情熱の一端として、田中が現場での厳しさを笑い話にしつつも、撮影の大変さを率直に明かしています。

田中は1981年にフリーランスになり、その後はテレビドラマの演出関係の仕事にシフト。特に名作ドラマを多く手掛け、視聴者に強い印象を残しました。彼の作品は、エンターテイメントとしての側面だけでなく、社会的なメッセージも含まれている点が特徴的です。

受賞歴と評価

田中の功績は評価され続け、2006年には他界する前に、彼の作品の中の一つが英国映画協会によって「1925年から2019年までの日本映画ベスト95」に選出されました。また、2022年には、第78回ベネチア国際映画祭クラシック部門に1974年の『㊙色情めす市場』が選ばれるなど、彼の作品は国際的にも評価され、日活ロマンポルノの枠を超えた重要な映画作品としての地位を確立しています。

主な作品

田中の監督作品としては、『花弁のしずく』（1972年）、『牝猫たちの夜』（1972年）、『㊙色情めす市場』（1974年）、そして『人妻集団暴行致死事件』（1978年）などがあり、特にこれらの作品は彼の独自のスタイルや視覚的な表現が際立っています。
また、彼は数多くのテレビドラマや映画においても監督を務め、幅広いジャンルで活動しました。

田中登の影響は今なお映画界で語り継がれており、彼が手掛けた作品は多くの後進の映画作りに影響を与え続けています。彼の映画スタイル、特にロマンポルノにおける芸術性は、平凡なエンターテインメントを越えた深い意味を持ち、映画という表現方法の幅を広げる役割を果たしました。

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