田丸稲之衛門

田丸稲之衛門：水戸天狗党を率いた志士の生涯

田丸稲之衛門（たまる いなのえもん）は、幕末期の水戸藩士であり、尊皇攘夷運動に身を投じた志士です。水戸天狗党の乱では中心人物として各地を転戦し、最後は越前国敦賀で処刑されました。

生涯

天保6年（1835年）に生まれた田丸稲之衛門は、もとは山国共綿の子でしたが、外祖父である田丸直諒の養子となりました。水戸藩では馬廻組を務め、藩領の検地における縄奉行を経験したことをきっかけに、藩政改革を目指す勢力と親交を深めます。

順調に出世を重ね、文久3年（1863年）には町奉行に任命されます。尊皇攘夷派からの信頼も厚く、筑波山挙兵の際には尊攘派の将として迎えられました。しかし、水戸藩内の親幕府勢力である諸生党が討伐の兵を挙げたことで、天狗党の乱が勃発。田丸稲之衛門は天狗党の一員としてこれに応戦します。

当初、戦況は水戸藩全域に拡大しましたが、幕府が尊皇攘夷派を賊軍とみなし、諸生党と連合して天狗党の鎮圧に乗り出すと、天狗党の主力部隊は降伏を余儀なくされます。しかし、武田耕雲斎や田丸稲之衛門らは尊皇の志を貫くため、京都への上洛を目指し転戦を続けました。

下野国、陸奥国へと転戦する中で、幕府から天狗党討伐を命じられた各藩と交戦。しかし、天狗党の武力に対抗できない藩も多く、領内通過を黙認されたり、金銭で通過を依頼する藩もありました。そのため、天狗党は比較的容易に移動することができました。しかし、上野国から美濃国にかけて、高崎藩、諏訪藩、松本藩、大垣藩といった譜代大名の兵と戦火を交え、北陸道から京都を目指すことになります。

越前国に至る頃には、大遠征の中で天狗党は疲弊し、越前藩や加賀藩などの大藩に対抗するだけの武力も失っていました。また、加賀藩が天狗党に同情的であったこともあり、武田耕雲斎、田丸稲之衛門らは加賀藩に降伏。慶應元年（1865年）2月4日、田丸稲之衛門は幕府の命により賊将として敦賀の地で斬刑に処されました。享年61歳。

明治維新後、田丸稲之衛門の尊皇攘夷運動における功績が認められ、明治24年（1891年）に従四位が贈られました。また、靖国神社に合祀されています。

家族

母：田丸以保子（中村氏）。慶応元年(1865年)2月9日に獄死。享年82歳。靖国神社合祀。
室：田丸奈津。慶応元年(1865年)3月25日に斬首。享年58歳。靖国神社合祀。
長女：田丸まつ。慶応元年(1865年)3月25日に斬首。享年19歳。靖国神社合祀。
次女：田丸弥津（福地姓）。慶応元年(1865年)5月20日、水戸で獄死。享年17歳。靖国神社合祀。
田丸うめ：慶応元年(1865年)3月25日に斬首。享年10歳。靖国神社合祀。
長男：田丸誠次郎。慶応元年(1865年)1月2日、水戸の獄で獄死（刑死とも）。享年2歳。靖国神社合祀。

登場作品

* 青天を衝け（2021年、NHK大河ドラマ、演：木村靖司）

もう一度検索