田久保英夫

田久保英夫の生涯と文学

田久保英夫（たくぼひでお）は、1928年1月25日に東京府東京市浅草区、現在の東京都台東区で生まれました。彼の父親は小峰秀次郎、母親は田久保ハルで、東京の下町で育ちました。田久保は慶應義塾大学文学部のフランス文学科を卒業し、その後、同大学の同窓生である山川方夫らとともに第三次『三田文学』を創刊しました。

文壇デビューと受賞歴

田久保は1954年に戯曲「金婚式」を『三田文学』に発表し、文壇に姿を現しました。1959年には『緑の年』を『新潮』に掲載し、正式に文壇デビュー。しかし、特筆すべきは、1961年に発表した『解禁』で第46回芥川賞の候補に挙がったことです。以降、彼は第47回（『睡蓮』）、第48回（『奢りの春』）でも候補となりますが、1969年に『深い河』で念願の芥川賞を受賞しました。これにより、彼の作家としての地位は確立されました。

田久保の受賞歴は多岐にわたります。1969年の芥川賞以外にも、1976年に『髪の環』で毎日出版文化賞を、1979年に『触媒』で芸術選奨文部大臣賞を受賞するなど、彼の功績は広く認められています。また、1985年から2000年まで芥川賞選考委員としても活動しました。

短篇の名手

田久保は短篇の名手として特に評価されており、その精緻な文体と男女間の心理の深い描写が特徴的です。彼の作品には、複雑な人間関係や感情が巧みに織り込まれており、読者はその深い洞察に引き込まれます。代表作に『解禁』や『深い河』があるほか、短編集として『海図』や『髪の環』なども非常に評価が高いです。

晩年とその後

田久保は2001年4月14日に食道癌による合併症で逝去しました。享年73歳。彼の戒名は華文院釈世英であり、遺骨は東京都立八柱霊園に埋葬されています。その文学は今も多くの読者に愛され続け、影響を与えています。

主な著書

• - 長編作品: 『触媒』（1978）、『花闇』（1978）、『雨飾り』（1980）、『深い河』（1969）
• - 短編集: 『解禁』（1963）、『水中花』（1970）、『髪の環』（1976）、『海図』（1985）
• - 随筆: 『不意の視野』（1975）、『滞郷音信』（2003）

田久保英夫の作品は、真に人間の感情とその機微を掘り下げたものであり、今後も多くの人々に感動を与えつづけることでしょう。

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