田井原遺跡

田井原遺跡は大分県竹田市田井に所在し、縄文時代晩期から弥生時代初頭にかけての遺構・遺物が発見されている遺跡です。特に注目を集めたのは、2007年9月に九州で初めて完全な形での出土が確認された御物石器です。

御物石器とは、主に北陸地方から近畿地方にかけて約200点の出土が確認されている特殊な石器です。その用途ははっきりとは解明されていませんが、祭祀に用いられた石器である可能性が指摘されています。名称の由来は、石川県鳳珠郡穴水町の法栄寺境内から出土した御物石器が明治天皇に献上されたことによります。

田井原遺跡から出土した御物石器は、長さ約40cm、幅約13〜8cm、重さ約5kgの黒色粘板岩製です。縄文時代晩期の地層から出土しており、その形状を完全な形で保っていました。興味深いことに、石器の材料となった石は遺跡の周辺地域では産出されないものであり、本州など他の地域で製作されたものが持ち込まれたと考えられています。

もし、この御物石器が主要な出土地である北陸地方や近畿地方で作られたものであるならば、縄文時代晩期にこれらの地域と九州地方との間に交流が存在したことを示唆する重要な証拠となります。当時の人々の移動や交易、文化の伝播について、新たな視点を提供する資料として、田井原遺跡の御物石器は大きな意義を持っています。

遺跡から出土したほかの遺物としては、同時期の土器や住居跡などがあり、これらもまた、当時の人々の生活様式や文化を知る上で貴重な情報源となっています。

田井原遺跡の発見は、九州地方における縄文文化の広がりや、地域間の交流の実態を解明するための重要な手がかりを与えてくれるでしょう。

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