田原臨海風力発電所

田原臨海風力発電所

愛知県田原市緑が浜に位置する田原臨海風力発電所は、株式会社ジェイウインド田原によって運営される、港湾区域に設けられた風力発電施設としては日本有数の規模を誇ります。親しみやすい愛称として「田原かぜりん」と呼ばれています。

施設の概要

この発電所は、トヨタ自動車の敷地を含む田原市の公有地にまたがって建設されており、特徴的な点として、風力発電機の真下には緑が浜エコパークとして公園が整備され、地域の景観に溶け込むように設計されています。

発電設備として、デンマークのベスタス社が製造した2000kW級の大型風車発電機が11基導入されています。これにより、発電所全体の総出力は22000kWに達します。風車のブレード直径は80メートル、地上からのハブ高さは67メートルという規模になります。

田原市は「たはらエコ・ガーデンシティ」構想を掲げ、再生可能エネルギーの導入を積極的に進めています。田原臨海風力発電所は、この構想の中核をなす施設の一つであり、市内には他にも渥美風力発電所、伊良湖風力発電所、久美原風力発電所、蔵王山展望台風力発電所などが稼働しています。

建設と操業の歩み

田原臨海風力発電所の計画は、2001年から風況調査や環境影響評価が進められました。田原市との間で公害防止協定が締結されたのは2003年12月のことです。その事業着手後、まず1基の風力発電機が愛知万博（2005年開催）の会場外関連施設としての役割を担い、名称を「田原風力発電所」として2004年3月に先行して営業運転を開始しました。この先行機は、博覧会期間中のトヨタグループパビリオンへの電力供給を担いました。

その後、残りの10基の建設が進められ、先行機の周囲を取り囲むように配置されました。これらの風車群は、先行機を含めた全体として田原臨海風力発電所として、2005年3月から本格的な営業運転を開始しました（ただし、11基のうち1基は後述の田原リサイクルセンターに関連する発電機と位置づけられています）。本格稼働後1年間（2005年3月〜2006年2月）の年間総発電電力量は約4600万キロワット時を記録しました。

地域との連携と課題

田原臨海風力発電所が立地する緑が浜エリアには、田原市のごみ処理施設である「田原リサイクルセンター」（愛称: 炭生館）が2005年4月から稼働しています。田原臨海風力発電所を構成する11基のうち1基は、「田原リサイクルセンター風力発電所」として、このリサイクルセンターで使用される電力を供給する役割も担っています。

地域全体で再生可能エネルギーの普及が進む一方で、風力発電施設に関しては、環境への影響に関する懸念も存在します。田原市内の他の風力発電所の一部では、風車の運転に伴う低周波騒音によって、近隣住民から頭痛やめまい、不眠といった体調不良を訴える声が上がっていることが報告されています。2010年3月には、環境省による調査で、風車の回転による騒音が確認された事例もあります。田原臨海風力発電所固有の課題ではありませんが、市内の風力発電全体における環境共生に向けた取り組みは継続的な課題と言えます。

田原市内では、蔵王山周辺で年平均毎秒8.3メートル、緑が浜2号緑地で年平均毎秒6.5メートル、白谷海浜公園で年平均毎秒4.7メートルなど、比較的良好な風況が得られる地域が複数あります。このような地域特性を活かし、田原臨海風力発電所は、田原市のエコシティ構想を象徴する施設として、今後も安定した再生可能エネルギーの供給源となることが期待されています。

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