田名部七湊

田名部七湊（たなぶしちそう）

田名部七湊とは、江戸時代に南部藩（盛岡藩）が領有していた下北地方に存在した複数の港の総称であり、藩が指定した積荷税を徴収する港を指します。別名として「下北七湊」とも呼ばれています。

概要

下北半島の内陸部は、豊富な檜の森林地帯を有していました。文禄・慶長・元和年間（1592年～1623年）頃から、城下町の建設など全国的な木材需要の高まりを背景に、日本海沿岸の豪商たちが次々と下北地方での交易に参入しました。これらの港は主に西廻り航路とともに発展し、盛岡藩の財政を潤す重要な役割を果たしました。

田名部

野辺地から陸奥湾沿いに北上し、脇野沢へと至る「入海辺道」の要衝に位置する田名部（現在のむつ市田名部町）には、寛文13年（1673年）に田名部代官所が設置され、田名部通34ヵ村を統治しました。この地域一帯が田名部と総称されることもありました。

田名部は古くから下北地方の物資の集散地として経済の中心的な役割を果たしており、江戸時代前期から村内に町場が形成され、田名部町として発展しました。田名部町自体は湊ではありませんでしたが、田名部川には田名部橋前と呼ばれる船着場があり、川舟が川内・大平の両湊との間を往来していました。また、他の湊から陸路で運ばれた船荷は田名部の蔵屋敷に集積され、そこから大畑や野辺地など周辺の村々へと輸送されていました。このような背景から、田名部では廻船問屋が許可されていました。

田名部七湊の構成

元和3年（1617年）3月、盛岡藩主の南部利直は、中世以降田名部を支配していた根城南部氏から下北の支配権を接収し、すべての山や林野を藩の直轄地として御山奉行が管理しました。正保2年（1645年）に江戸幕府に提出された国絵図には、大畑、大間、奥戸、大平、九艘泊の五湊が田名部五湊として記載されていました。しかし、木材伐採が盛んだった時代には、下風呂、蛇浦、川内、佐井、安渡、脇野沢、異国間（易国間）、蛎崎、長後、福浦、牛滝など11の湊も登場し、合計16の湊が交易を行っていました。

田名部七湊という名称が初めて確認できるのは、元禄元年（1688年）の「郡名仮名付帳」『内史略』であり、川内、安渡、大畑、大間、奥戸、佐井、牛滝の七湊が藩に報告されています。ただし、時代によってその構成には若干の変動が見られました。

田名部七湊は、下北地方の経済と物流を支える重要な役割を担い、地域の発展に大きく貢献しました。

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