田川マツ

田川マツ（たがわ まつ）は、17世紀初頭に肥前国平戸藩の藩士、田川七左衛門の娘として生まれました。彼女は、当時平戸を拠点に活動していた明の海商、鄭芝龍（てい しりゅう）の妻となり、後に台湾の英雄として名を馳せる鄭成功（てい せいこう）の母となります。

生涯

田川マツは、鄭芝龍との間に二人の息子をもうけました。一人は、日本名で田川福松、中国名で鄭森と名付けられた後の鄭成功です。もう一人は、田川家を継ぐことになった次郎左衛門、後の七左衛門です。鄭成功が7歳になった頃、一家は鄭芝龍の故郷である福建省に移り住みました。

しかし、平穏な日々は長くは続きませんでした。1647年、清朝が福建省に侵攻した際、清軍は田川マツの邸宅に押し寄せました。激しい戦いの末、彼女は捕らえられることを避けるため、自害して生涯を閉じました。彼女の悲劇的な最期は、激動の時代を生き抜いた女性の象徴として、後世に語り継がれています。

評価

田川マツの息子である鄭成功は、生前には「反清復明」という悲願を果たすことはできませんでした。また、台湾との関わりも短いものでしたが、台湾に独自の政権を築き、その開発を促進する基盤を築いたことは紛れもない事実です。そのため、今日では台湾の人々にとって、不屈の精神の象徴、そして「開発始祖」「民族の英雄」として、社会的に非常に高い地位を占めています。田川マツは、その偉大な息子の母として、間接的に台湾の歴史に名を刻んだと言えるでしょう。

鄭成功まつり

田川マツにまつわる逸話として、1624年7月14日に彼女が鄭成功を妊娠中に、貝拾いをしていた際に突然産気づき、岩にもたれかかって出産したというものがあります。その岩は、現在も平戸市川内港近くの千里ヶ浜に「児誕石」として大切に保存されています。毎年この日には、地元川内地区の人々によって「鄭成功まつり」が盛大に開催され、田川マツと鄭成功の誕生を祝います。

出典

* 『鄭成功の母』福住信邦、講談社出版サービスセンター, 1987年10月

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