田川啓二

田川啓二：オートクチュールビーズ刺繍の巨匠

田川啓二氏は、1959年東京都生まれの実業家で、オートクチュールビーズ刺繍の世界で卓越した才能を発揮する服飾デザイナーです。幼少期に母親のフランス刺繍に触れたことがきっかけとなり、刺繍の世界にのめり込みました。明治大学法学部卒業後、レナウンルックに勤務しながらエスモードジャポン夜間コースで研鑽を積み、その後フランスのクチュールブランドで経験を積みます。そこでインドの職人がビーズ刺繍を手掛けていることを知り、その技術に感銘を受けました。

1989年、自身のブランド「チリア」を設立。インドのムンバイとデリーの熟練した職人にビーズ刺繍を発注し、アパレルブランドへの下請けとして活動を開始します。言葉の壁を乗り越え、観察力と身振り手振りで意思疎通を図りながら、繊細で精緻な作品を次々と生み出しました。1996年には、品川区西五反田に「チリアエンブロイダリースタジオ」を開講し、後進の育成にも力を注ぎました。

2000年には初の個展「田川啓二の世界オートクチュールビーズ刺繍展」を開催し、その高い技術力と独創的なデザインセンスは高く評価されました。その後も精力的に活動を続け、2013年にはハワイ・ワイキキにカフェ＆ショップをオープン。2016年には文化学園大学特任教授に就任し、教育活動にも携わっています。

田川氏の作品の特徴は、20,000種類にも及ぶ材料と高度な技術を駆使し、複雑で高密度なビーズ刺繍を施す点にあります。これにより、立体感のある繊細な陰影、色彩、光彩、そしてグラデーションを表現することに成功しています。特に、ビーズ刺繍が動きによって生み出す反射光の変化を「ビーズ刺繍の一番の魅力」と捉え、モデルに試着させ、あらゆる角度から作品をチェックする徹底ぶりは有名です。

ゴッホやモネといった巨匠の絵画をビーズ刺繍で忠実に再現する作品や、『不思議の国のアリス』の世界観を表現した作品など、その表現の幅は多岐に渡ります。数々の著名人の衣装デザインも手掛けており、後藤真希（2003年 第54回NHK紅白歌合戦）、宮沢りえ（2004年第27回日本アカデミー賞授賞式）、藤原紀香（2004年第76回アカデミー賞授賞式、第57回カンヌ国際映画祭）、黒柳徹子（2007年12月「徹子の部屋コンサート」）、和田アキ子（2011年 第62回NHK紅白歌合戦）など、錚々たる顔ぶれが名を連ねています。

黒柳徹子氏とは公私ともに親しい間柄で、黒柳氏の衣装製作だけでなく、個人事務所のマネージメント業務も兼任しています。軽井沢の別荘に黒柳氏専用の部屋を用意するほど親密な関係を築いており、その温かい人柄も広く知られています。バラ育種家・河本純子氏から贈られた新作のバラには「クチュールローズ・チリア」と命名するなど、多方面で活躍する稀有な存在です。

趣味はガーデニング、料理、着物やブリキ製玩具のコレクションなど多岐に渡り、その豊かな感性と探究心は、彼の作品に息づいています。NHK『おしゃれ工房』や『すてきにハンドメイド』などテレビ番組への出演経験や、『フレンチテイストのビーズ刺繡』など多数の著書も出版しており、ビーズ刺繍の普及にも大きく貢献しています。

田川啓二氏は、単なる服飾デザイナーの枠を超え、独自の視点と技術で、ビーズ刺繍という表現方法の可能性を無限に広げ続ける、まさにオートクチュールビーズ刺繍の巨匠と言えるでしょう。彼の活動は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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