田村善次郎

田村善次郎：民俗学の探求者、美術と文化の架け橋

田村善次郎氏は、1934年福岡県に生まれ、日本の民俗学研究に多大な貢献を果たした学者です。武蔵野美術大学名誉教授として、美術と民俗学という一見異なる分野を繋ぎ、独自の視点を持ち合わせた研究活動を行いました。

学究の道と師事

1957年、東京農業大学を卒業後、同大学院修士課程を修了。その後、武蔵野美術大学の教授、そして同附属美術図書館館長を歴任しました。2005年には退職し、名誉教授となりました。氏の研究人生において特筆すべきは、民俗学の巨匠、宮本常一氏への師事です。宮本氏の膨大な著作を丁寧に編纂し、後世への継承に尽力しました。その仕事ぶりは、単なる編纂作業を超え、宮本氏の思想と業績を深く理解し、体系的に整理する作業でありました。

著作活動：多様な視点からの民俗探求

田村氏の著作は、写真集から学術書まで幅広く、その対象も多岐に渡ります。日本の棚田の成り立ちを考察した『棚田の謎 千枚田はどうしてできたのか』や、ネパールの文化に触れた旅行記『ネパール周遊紀行』など、フィールドワークに基づいた独自の視点が光る著作が多数あります。また、佐藤健一郎氏との共著も多く、日本の民具や暦・行事、祈りの文化など、多角的に日本の民俗文化を解き明かしています。これらの著作は、日本の民俗学研究に新たな視点を提供し、多くの読者に日本の伝統文化の奥深さを伝えています。

宮本常一著作集編纂：民俗学研究への貢献

田村氏の最も大きな功績の一つは、宮本常一著作集の編纂です。これは、日本の民俗学研究において極めて重要な仕事であり、宮本氏の膨大な研究成果を体系的にまとめ、後世に伝える役割を果たしました。単に資料をまとめるだけでなく、宮本氏の思想や研究方法を深く理解した上で編纂されたこの著作集は、日本の民俗学研究の基礎文献として、現在も多くの研究者によって活用されています。 その他にも、宮本常一関連の書籍を数多く編纂、監修しており、宮本氏の研究を広く一般に知らしめることに貢献しました。

受賞と評価

田村氏の功績は高く評価され、2006年には瑞宝中綬章を受章しました。これは、日本の文化の発展に貢献した人物に贈られる栄誉ある賞であり、氏の民俗学研究への貢献が国家レベルで認められたことを示しています。

まとめ：美術と民俗学の融合

田村善次郎氏は、美術と民俗学の両分野に精通した稀有な研究者でした。武蔵野美術大学で培った美術への造詣と、宮本常一氏に師事して得た民俗学の深い知識を融合させ、独自の研究スタイルを確立しました。その研究成果は、日本の民俗学研究に大きな足跡を残し、後世に継承されるべき貴重なものです。氏の著作は、これからも日本の文化を理解する上で重要な手がかりとなるでしょう。

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