佐藤健一郎

佐藤健一郎：国文学と民俗学の研究者

佐藤健一郎(1936年6月10日-2014年9月5日)は、日本の国文学者、民俗学者であり、武蔵野美術大学名誉教授として知られています。東京に生まれ、東京都立大学卒業後、同大学院修士課程を修了。その後、武蔵野美術大学で講師、助教授、教授を歴任し、2007年に定年退職、名誉教授となりました。

佐藤氏の研究分野は、主に日本の民俗学に焦点を当てていました。具体的な研究テーマは多岐に渡り、日本の伝統的な信仰や文化、特に庶民の生活に根付いた民俗文化に深い関心を抱き、数々の研究成果を残しました。

その業績は、単著のみならず、共著や校注においても顕著です。特に、田村善次郎氏との共著は、民俗学研究において重要な位置を占めています。例えば、『小絵馬 いのりとかたち』では、絵馬という民俗資料を通して、人々の信仰や願いを多角的に考察しています。また、『藁の力 民具の心と形』では、藁を用いた民具に焦点を当て、日本の伝統的な技術や生活文化を詳細に分析。さらに『十二支の民俗誌』、『暦と行事の民俗誌』、『祈りの民俗誌』など、民俗学の様々な側面を網羅した共著を発表し、日本の民俗文化の理解に大きく貢献しました。

一方、国文学の分野では、謡曲の研究で知られています。小山弘志氏らとの共校注・訳による『日本古典文学全集 謡曲集』と『新編日本古典文学全集 謡曲集』は、謡曲研究において重要な注釈付き全集として高く評価されています。これらの作品を通して、古典文学の深遠な世界を現代の読者に分かりやすく伝えています。

佐藤氏の研究活動は、単に学術的な成果にとどまりません。民俗文化の継承と普及にも積極的に取り組み、一般の人々にも分かりやすい形で、日本の伝統文化の魅力を伝えようとしていました。その姿勢は、彼の著書や共著、そして講演活動などを通して、広く社会に影響を与えました。

2014年9月5日、肺癌のため78歳で逝去。日本の国文学と民俗学研究に多大な貢献をした佐藤健一郎氏の功績は、これからも長く記憶に残り続けることでしょう。彼の残した著作は、後世の研究者や、日本の伝統文化に関心を持つ人々にとって、貴重な資料として活用されていくに違いありません。

主な共著書

『小絵馬 いのりとかたち』（田村善次郎共著、若尾和正写真、淡交社、1978年）
『藁の力 民具の心と形』（田村善次郎共著、淡交社、1996年）
『十二支の民俗誌』（田村善次郎共著、工藤員功写真、八坂書房、2000年）
『暦と行事の民俗誌』（田村善次郎共著、工藤員功写真、八坂書房、2001年）
『祈りの民俗誌』（田村善次郎共著、八坂書房、2013年）

主な校注作品

『日本古典文学全集 謡曲集』（小山弘志、佐藤喜久雄共校注・訳、小学館、1973-75年）
* 『新編日本古典文学全集 謡曲集』（小山弘志共校注・訳、小学館、1997-98年）

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