田淵行男

田淵 行男（たぶち ゆきお）について

田淵行男（たぶち ゆきお）は、1905年6月4日に鳥取県で生まれ、1989年5月30日に亡くなった著名な山岳写真家および高山蝶研究家です。彼は、「すべての昆虫少年にとってのヒーロー」と称され、多くの写真や著作を通じて自然の美しさを伝えました。

幼少期と教育

田淵は黒坂村で父と母の間に生まれましたが、彼の幼少期は波乱に富んでいました。母が早逝した後、父は再婚しますが、その後も家族との別れを経験します。彼は小学校を卒業し、境高等小学校に進学。その後、学習院中等科に進み、特にチョウの細密画を描く才覚を育みました。

1924年には東京高等師範学校に入学し、自然への関心を強めていきます。特にギフチョウの研究が彼の活動の基盤となり、1927年には岐阜県の名和昆虫研究所を訪れることになります。

教職と山岳活動

田淵は新湊町の中学校で教職に就いたのち、東京府立第二高等女学校や東京府立女子師範学校で理科を教え、生徒を引率して山登りを行いました。この経験が後の山岳写真家としての資質を磨くことになります。1938年には「日本学術写真社」を設立し、写真撮影のキャリアをスタートさせるのです。

1945年の東京大空襲後、田淵は長野県に疎開します。この頃から彼はフリーランスとして理科教材の制作に携わり、特に自然に関する写真撮影に力を注ぎました。1946年には白馬山麓でのギフチョウの生息地を発見し、1949年以降は多くの写真を雑誌に掲載します。

写真家としての活動

1951年には『田淵行男 山岳写真傑作集』を発表し、以降も様々な著作や作品に取り組みます。特に「高山蝶」に関する研究は彼の名を全国に広め、1957年には生態写真集『ヒメギフチョウ』を出版しました。彼の写真は単なる記録に留まらず、自然の美しさや重要性を伝えるものとして多くの人々に影響を与えました。

1960年には多くの賞を受賞し、その後も写真集や文献を残し続けました。1970年代には北海道の高山蝶調査も行い、1980年にはNHK連続テレビ小説「水色の時」が彼の人生に基づいて制作されました。

晩年と遺産

田淵は晩年にパーキンソン病と戦いながらも、多くの著作をまとめ上げました。1989年に死去するまで、彼は日本の自然とその保護に尽力し続けました。彼の死後、田淵行男記念館が開館し、彼の業績を後世に伝えるための活動が続けられています。

田淵行男の生涯は、自然を愛し、写真を通じてその魅力を伝えることに尽力した一人の男の物語です。近年では彼の作品が再評価され、多くの人に高山蝶や自然の大切さを再認識させています。

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