田瀬理夫

田瀬 理夫

田瀬 理夫（たせ みちお）は、1949年に東京都で生まれた日本の著名な造園家である。現在は自身が設立した株式会社プランタゴの代表取締役を務め、東京芸術大学や千葉大学大学院では非常勤講師として後進の指導にもあたっている。

彼のキャリアは、1973年に千葉大学園芸学部造園学科を卒業したことから始まった。大学では都市計画と造園史を専門的に学び、同年には株式会社富士植木に入社。実務経験を積んだ後、1977年には自身のデザイン活動の拠点としてワークショップ・プランタゴを設立した。そして、1990年にこれを株式会社に改組し、代表に就任。以降、多岐にわたる分野でランドスケープデザインを展開している。

主な仕事

田瀬氏が手がけたプロジェクトは非常に幅広く、そのスケールも大小様々である。初期の代表作としては、1978年の国営沖縄海洋博記念公園における「郷土村おもろさうし園計画」や、翌年の「熱帯ドリームセンター」などがある。住宅関連のランドスケープも多く、「藤ヶ丘タウンハウス」（1979年）などを手掛けた。

特に注目される仕事の一つに、1995年に竣工した福岡市の複合施設「アクロス福岡」のステップガーデンがある。これは、建物の南側斜面に沿って階段状に設けられた緑化空間であり、都心部に豊かな自然を取り込む革新的な試みとして高く評価された。植物の遷移を考慮した計画は、竣工から時を経て多様な生態系を育み、都市における緑のあり方に一石を投じた。

また、福島県いわき市にある水族館「アクアマリンふくしま」関連の仕事も複数手がけている。2000年の本体計画に始まり、水辺の生態系や自然環境を再現・創造するプロジェクトに深く関わった。

その他にも、1992年の「らんの里堂ヶ島」、1994年の「板橋区立熱帯環境植物館」、1998年の「BIOSの丘」や「立教大学新座キャンパス」、2000年の「札幌メディアパーク スピカ」、2002年の「秩父市歴史文化伝承館」、2005年の中国深圳における大型プロジェクト「SHENZHEN CITY CENTRAL PLAZA and SOUTHERN AXIS PROJECT」、2016年から手掛けた「大埜地の集合住宅」など、美術館、大学キャンパス、集合住宅、企業の研究所、さらには海外の都市計画まで、その活動範囲は広大である。これらの仕事を通じて、彼は単なる景観づくりに留まらず、その場所の生態系や歴史、文化といった要素を深く読み込み、持続可能な環境デザインを追求していることがうかがえる。

受賞歴

田瀬氏の業績は国内外で高く評価されており、数々の賞を受賞している。

1995年: 日本造園学会賞（「らんの里堂ヶ島」の設計）
2000年: THE 2000 Business Week/Architectural Record Award
2001年: グッドデザイン賞（「札幌メディアパーク スピカ」、共同）
「アクロス福岡」関連では、2002年に日経BP技術賞（共同）、屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール大賞（ステップガーデン、共同）など、またエコビルド大賞（共同）、環境情報科学センター賞（共同）、グッドデザイン賞（「記憶を継承する住まい」、共同）など、複数の賞を受賞。2003年にも建築設備デザイン賞（共同）、AACA賞優秀賞（共同）を受賞している。
2005年には「OM ソーラー協会『地球のたまご』計画」でエコビルド賞（共同）、SBO5サスティナブル建築賞審査員特別賞（共同）を受賞。
2007年にはQUEEN'S MEADOW COUNTRY HOUSEでグッドデザイン賞を受賞している。

これらの受賞歴からは、彼の仕事がデザイン性だけでなく、技術革新や環境への配慮、持続可能性といった多角的な視点から高い評価を得ていることがわかる。特に共同受賞が多い点は、建築家や他の専門家と連携しながら、複合的な課題に取り組む彼のプロジェクトスタイルの特徴を示している。

関連情報

田瀬氏の仕事と思想については、関連書籍を通じて知ることができる。西村佳哲氏による『ひとの居場所をつくる　ランドスケープデザイナー田瀬理夫さんの話をつうじて』（筑摩書房）や、『ランドスケープデザインNO.71』に掲載された平賀達也氏によるインタビュー記事などが刊行されている。

田瀬理夫は、都市空間における自然の復権や、その土地固有の歴史・文化、そしてそこに暮らす人々の営みを尊重するデザインを追求し続けている。現代社会におけるランドスケープデザインのあり方に対し、実践と教育の両面から多大な貢献を果たしている造園家である。

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