田老町

田老町の歴史と津波との闘い

岩手県下閉伊郡に存在した田老町は、2005年に宮古市と合併し消滅しましたが、その歴史は津波との闘いの歴史でした。古くから津波被害に悩まされ、「津波太郎」という異名を持つほどでした。

田老町の誕生と変遷

1889年、町村制の施行により田老村が発足。その後、郡の合併を経て下閉伊郡田老村となりました。1944年には町制を施行し田老町となりましたが、2005年に宮古市と合併し、その名を閉じました。

相次ぐ津波被害

田老町は、幾度となく津波の被害に遭ってきました。1896年の明治三陸地震では、高さ14.6mの津波が襲い、町の人口の8割以上が犠牲となる壊滅的な被害を受けました。また、1933年の昭和三陸地震でも、町の人口の3分の1が亡くなるという甚大な被害が発生しました。これらの津波被害を教訓に、田老町は防潮堤建設に力を入れることになります。

防潮堤建設への苦難の道のり

1934年、防潮堤の建設が開始されましたが、日中戦争の激化により工事は中断を余儀なくされました。戦後、町の尽力により工事が再開され、1958年に最初の防潮堤が完成しました。その後も増設が続けられ、1979年には全長2433m、海抜10mの巨大な防潮堤が完成しました。この防潮堤は、1960年のチリ地震津波では被害を防ぎ、田老町は「津波防災の町」として国内外から注目を集めました。

東日本大震災による防潮堤の崩壊と教訓

2011年3月11日、東日本大震災による津波は、田老町を再び襲いました。巨大な防潮堤は一部が倒壊し、市街地は壊滅的な被害を受けました。この災害では、防潮堤があるという安心感から避難が遅れた人も多く、200人近い犠牲者を出しました。震災後、住民の多くは高台移転を希望するようになりました。

復興と新たな防潮堤

震災後、残った防潮堤は嵩上げされ、2線堤として再建されました。さらに、2021年には高さ14.7m、総延長1.2kmの新たな1線堤が完成しました。これらの防潮堤は、田老町の歴史と教訓を未来に伝えるための重要な役割を担っています。

田老町の防災への取り組み

田老町は、津波防災の町として、防災教育や避難訓練にも力を入れてきました。特に、児童向けの防災教育は、紙芝居を活用するなど、工夫が凝らされていました。これらの活動は、全国的にも高く評価され、防災の模範となる町として知られていました。

現在の田老地区

現在の旧田老町域は宮古市田老地区として、震災の教訓を活かしながら復興が進められています。旧町役場跡地には津波資料館が建設される予定で、過去の災害の教訓を未来に伝えるための施設として期待されています。また、三王岩や真崎海岸などの名所も、その美しい景観を保ちながら、観光客を迎えています。

まとめ

田老町は、津波との闘いの歴史の中で、多くの犠牲を出しながらも、防災に対する意識を高め、巨大な防潮堤を築き上げました。東日本大震災では、その防潮堤も破壊されましたが、その教訓を活かし、より強固な防潮堤を再建しました。田老町の歴史は、自然災害の脅威と防災の重要性を私たちに教えてくれます。

名所・旧跡

三王岩: 津波に耐え現存するが、遊歩道が流され遠方からしか見ることができない。
真崎海岸: 美しい海岸線が広がる。
佐賀部: 地域の歴史を感じさせる場所。
防潮堤: 田老町の歴史を象徴する建造物。

交通

* 三陸鉄道北リアス線: 田老駅、摂待駅が旧町域に存在する。

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