田良島昭

田良島昭は、1928年に鹿児島県に生まれ、建築教育者および建築家として日本の建築分野に貢献した人物です。鹿児島大学で教授職を務めた後、第一工業大学の名誉教授としてその功績が称えられました。

彼の学歴は多岐にわたります。1945年に旧制鹿児島県立第一鹿児島中学校を卒業後、戦時下の学徒動員として愛知県にあった中島飛行機製作所半田工場での勤務を経験しました。終戦後の1949年には、旧制鹿児島県立工業専門学校の建築科を卒業しています。その後、新制大学となった鹿児島大学で助手として無給の期間を過ごしました。

建築に対する深い探求心から、1951年には建築学の最高峰の一つである東京大学工学部建築学科へ進み、研究生として、当時すでに日本を代表する建築家であった丹下健三氏の研究室で学びました。この東京での研究生活は、彼のその後の建築観や教育観に大きな影響を与えたと考えられます。

東京での学びを終えた後、1955年からは著名な建築家・芦原義信氏の設立した研究所に勤務し、実務を通じて建築設計や計画の実際を学びました。芦原研究所を退職した後も、建築分野での活動を続け、建築家・都市計画家である浅田孝氏が進めていた南極の居住居計画といった先駆的なプロジェクトにも関わっています。

その後、1958年には津端修一氏の紹介により、福岡県博多にある牧野工務店で実務経験を積みました。そして1961年には再び教育・研究の道に戻り、九州大学工学部建築学科の助手として着任し、若き研究者・教育者としてのキャリアをスタートさせました。

1964年、田良島氏は故郷である鹿児島に戻り、鹿児島大学工学部建築学科に移りました。ここではまず助教授として、後に教授として、約二 decadeにわたり建築教育の指導者として多くの学生の育成に尽力しました。鹿児島大学での教職は、彼の教育者としての地位を確立する重要な期間となりました。

1985年には、第一工業大学に移籍し、引き続き工学部建築学科の教授として教壇に立ちました。2002年に退職するまで、その教育者としての情熱を絶やすことなく、後進の指導にあたり続けました。退職後には、同大学の名誉教授の称号を授与されています。

田良島氏は建築教育や設計実務に加え、著作活動にも力を入れました。特に地元の鹿児島に関連する建築や景観、歴史に関する研究や執筆活動は注目に値します。代表的な著作として、1989年の「忘れ去られる中で」（鹿児島大学）、1999年の「近代化と鹿児島の建造物」（かごしま文庫52、春苑堂出版）、そして「鹿児島の原風景 絵と俳句でたどる」などがあります。これらの著作は、彼が地域の建築遺産や文化に対して抱いていた深い関心と愛情を示すものです。

田良島昭氏の生涯は、旧制から新制への移行期、戦中・戦後の混乱、そして高度経済成長期を経ての地方における建築教育の確立という、日本の近代建築史の大きな流れと重なります。丹下健三や芦原義信といった著名な建築家のもとで学んだ経験、実務経験、そして長年にわたる教育者としての活動を通じて、彼は日本の建築界、特に地方における建築教育の発展に重要な足跡を残しました。彼の業績は、建築設計、教育、研究、そして地域文化への貢献という多角的な側面に及んでいます。

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