浅田孝

浅田孝：日本の都市計画・建築に貢献した先駆者

浅田孝（あさだ たかし）は、1921年3月19日に生まれ、1990年12月4日に没した日本の都市計画家・建築家です。彼は、戦後の日本において都市計画と建築の分野で重要な役割を果たしました。

生い立ちと学歴

浅田は香川県出身で、父は医師でした。旧制松山高等学校を経て、東京帝国大学工学部建築学科を卒業。海軍技術士官として広島県呉市の基地に配属され、飛行場施設の建設やダムの修繕計画などに従事しました。1945年8月には、広島への原爆投下直後に現地へ赴き、調査・救助活動を行いました。

丹下健三との協働とメタボリズム

東京大学大学院に進学後、岸田日出刀の下で学び、修了後は丹下健三のもとで戦災復興都市計画に参加。広島平和記念公園や旧東京都庁舎など、丹下が手掛けた数々の建築プロジェクトに設計スタッフとして深く関わりました。また、建築家・デザイナーグループ「メタボリズム」の結成にも参画し、大阪万博を主導するなど、その活動は多岐にわたりました。

都市計画・地域開発への貢献

浅田は、南極大陸昭和基地プレファブユニットの設計、横浜市六大事業（みなとみらい21地区の開発、横浜ベイブリッジ構想、港北ニュータウン等）における都市計画の骨格づくり、横浜こどもの国、世界デザイン会議、香川県の五色台開発や坂出人工土地、美濃部亮吉東京都知事時代の「広場と青空の東京構想」、大阪万博と沖縄海洋博プロデュースなど、数多くのプロジェクトを手掛けました。さらに、国レベルの政策研究機関である総合研究開発機構（NIRA）の設立や、本四連絡橋（瀬戸大橋）の建設提案にも尽力しました。

方法論の提起

浅田は、戦後の都市化、地域開発の設計、実施に力を注ぐ一方、文筆による方法論の提起も活発に行なっていました。1950年には、建築雑誌誌上に発表した『建築家とモラル』と題した文章で、芸術を作る作家ではなく本質的な部分に対する深い理解に基づく創造者としての建築家像を記述し提起。

1955年、雑誌新建築編集顧問として、「新建築」1955年8月号「原爆下の戦後10年 日本人の建築と建築家」を編集。こうした特集を組んで戦後復興の方向についての世論を呼びおこしました。

環境開発センターの設立と活動

1959年、地域開発・環境問題の調査研究のため、民間の都市コンサルタントとして環境開発センターを設立。大規模な地域開発、施設計画等を行ないました。経済企画庁の長期展望委員会や国民所得倍増計画委員会にも参加し、国土計画の策定に貢献しました。

横浜市との関わり

1960年代には、横浜市の都市づくりに深く関与しました。飛鳥田一雄横浜市長のブレーンとして、横浜の将来計画に関する基礎調査報告書や「横浜の都市づくり〜市民がつくる横浜の未来」をまとめ、米軍に長く接収されていた横浜都心部の強化策や三菱ドックヤード移転、地下鉄建設などのプロジェクトを提案しました。これらの提案は、今日の横浜市アーバンデザインのルーツとなっています。

晩年

1987年から1990年に死去するまで、トヨタ財団の専務理事を務め、環境問題に関して積極的な提言を行いました。その甥には、『構造と力』などの著者で元京都大学経済研究所准教授で京都造形芸術大学教授の浅田彰がいます。

評価

川添登は浅田を「建てない建築家、書かない評論家、教えない大学の教授」と評しました。哲学する都市計画家とも呼ばれ、その革新的なアイデアと行動力は、多くの人々に影響を与えました。浅田の業績は、戦後日本の都市計画・建築史において重要な位置を占めています。

主要著作

浅田は、都市計画、建築、環境問題に関する多数の著作を発表しました。代表的なものとして、『環境開発論』（1968年）などがあります。

参考文献

浅田孝（1968）『環境開発論』SD選書 鹿島出版会
『Urban Design Yokohama』鹿島出版会 （1992）
* 新建築1972年1月号 波頭をとらえる

浅田孝は、日本の都市計画・建築の発展に大きく貢献した先駆者として、その名が記憶されることでしょう。

もう一度検索