田阪美徳

田阪 美徳（たさか よしのり）は、明治から昭和にかけて活動した日本の高名な造園家です。1895年に広島県三原市に生まれ、1969年にその生涯を終えました。特に神社林苑の計画、造成、管理における第一人者として知られ、明治神宮や橿原神宮の林苑造成、さらには伊勢神宮の修復といった国家的な大事業に深く関与しました。

東京帝国大学農学部農学科を1920年（大正9年）に卒業後、田阪氏は明治神宮造営局に入局し、造園家としてのキャリアをスタートさせました。造営局の廃止に伴い、1930年には明治神宮外苑管理署の技師（内務省所属）に任命され、その後約10年間は外苑の主任技師としてその維持管理運営に携わりました。

1936年には内務技師となり、内務省神社局に勤務するようになります。これを機に、全国各地の官国幣社の林苑整備に一貫して関わることとなります。1937年からは紀元2600年祝典事務局の嘱託として、橿原神宮、畝傍山東北陵、宮崎神宮の境域拡張整備という重要な事業に従事しました。1940年には神武院設置に伴い同院の技師となり、翌年には内務技師も兼任。終戦まで神宮関係造営所にて勤務を続け、神社林苑のエキスパートとしての地位を確固たるものにしていきました。

第二次世界大戦終結後の1946年（昭和21年）、井下清の後を受けて東京都建設局公園課長に就任します。戦後の混乱期における公園緑地の秩序回復に尽力しましたが、特に農地法による公園緑地の農地解放の動きに対しては、自身の信念に基づき強い抵抗を示しました。この筋の通った姿勢から「ことわり田阪」とあだ名されたほどですが、その活動は過労につながり、体調を崩して1952年に課長職を辞し、退職を余儀なくされました。この間、1948年には東京都公園協会の設立にも参画しています。退職後は、かつての勤務先である明治神宮の林苑常勤嘱託として復帰しました。

1955年からは、戦災により被害を受けた神宮の復興事業が始まると、臨時造営部に兼務し、1956年には明治神宮技師となります。神社林苑の権威として、新潟県の弥彦神社や宮城県の塩釜神社など、各地の神社から林苑整備の委嘱を受けました。とりわけ、1960年の伊勢湾台風で甚大な被害を受けた伊勢神宮の災害復旧事務を嘱託され、林苑整備に集中的に取り組みました。1965年には伊勢神宮評議員、1967年には顧問を委嘱されるなど、伊勢神宮の復興と整備に深く関わりました。

田阪氏は、神社林苑の権威であるだけでなく、庭園の設計や管理においても緻密な技術力を発揮し、特に図面作成にも長けていました。また、多方面にわたる趣味を持ち、文雅を愛する人物でもありました。和歌や俳句、書道、水墨画に秀で、酒を嗜み、各種の趣味園芸団体の活動にも貢献するなど、情味あふれる人柄で知られていました。

1967年には建設省専門委員を委嘱され、大阪で開催される万国博覧会の政府出展日本庭園設計委員会委員長として、庭園の作庭において指導的な立場にありました。しかし、庭園が完成するのを見届けることなく、1969年に病によりその生涯を閉じることとなりました。その功績は、田阪美徳先生記念会によって編纂された『田阪美徳先生遺稿』（1970年）にまとめられています。

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