由良内駅

由良内駅：港町を支えた貨物駅の軌跡

和歌山県日高郡由良町に存在した由良内駅は、国鉄紀勢本線貨物支線に属する貨物駅でした。紀伊由良駅から分岐する支線の終着駅として、1929年4月21日に開業、1968年6月1日に廃止されています。港町・由良町の発展に深く関わった、歴史ある駅の物語を紐解いていきましょう。

鉄道誘致と港湾整備

紀勢本線（当時紀勢西線）の日高郡方面への延伸計画では、由良村と東内原村が誘致にしのぎを削りました。陸の孤島化を防ごうとした由良村は、大分セメント由良工場の立地や由良港の優位性を訴え、最終的に村経由が決定されました。1925年12月、湯浅～紀伊由良間の工事が開始されました。しかし、駅は村の中心部や港から離れた場所に建設されることになり、村民の利便性や港湾の衰退が懸念されました。

そこで、由良村は1925年12月18日、由良港への臨港鉄道建設を鉄道省に請願。良港であること、小松島港との最短ルートとなること、大分セメント工場の存在、紀南工業地域の外港としての機能、紀勢本線の貯炭場設置の可能性などを強調しました。この請願を受け、村は港の一部を埋め立て、貯炭場の用地として鉄道省に提供することに。村の予算3年分に相当する68,000円を投じ、1万トン級船舶が接岸できる岸壁が完成しました。

開業と発展

1928年10月28日、湯浅～紀伊由良間が開業。翌11月には、紀伊由良駅から港までの臨港線の建設が始まり、1929年4月21日、紀伊由良～御坊間の開通と同時に由良内駅が開業しました。当初の駅名は「ゆらのうち」、所在地は由良村大字阿戸でした。開業後は石炭、セメント、農産物、乾魚などの貨物輸送の中心地となり、地域の産業に大きく貢献しました。1937年頃からは、隣接地に設置された紀伊防備隊向けの軍需物資輸送も担い、戦争中は吹井地区の陸軍燃料貯蔵所への輸送も行っていました。

災害と変遷

1946年12月、昭和南海地震による津波で駅舎が半壊、線路や設備、貨物が流失する被害を受けました。復旧には5,000人もの人員が必要となりました。1947年4月からは復員兵輸送を開始。1953年の紀州大水害では、紀勢本線が不通となり、下津～由良内～紀伊田辺間を船舶で代行輸送する事態にも対応しました。1959年7月15日には、紀勢本線の全通に伴い、所属路線名が紀勢西線から紀勢本線に変更されました。

機関車用燃料供給拠点であった駅構内の貯炭所は、無煙化の進展により需要が減少。1961年6月、大阪の桜島駅にある貯炭所に統合され、関西地方資材部由良内配炭所は廃止となりました。その後、国鉄貨物輸送の減少により、1968年6月1日、由良内駅とその臨港貨物線は廃止となりました。廃止時の所在地は由良町大字網代でした。貨物線の跡地は県道となりました。

駅構造と周辺環境

駅は由良港の係船岸壁と由良川の間に位置していました。1944年12月時点の配線図によると、本線から3本の線路（1番線～3番線）と、さらに末端側に浜1番線、浜2番線がありました。線路北側に貨物上屋、南側に由良内配炭所と駅舎が配置されていました。

由良内駅の足跡

由良内駅は、港町由良の発展を支え、幾多の困難を乗り越えてきた歴史を持つ駅でした。その存在は、地域の産業や人々の生活に深く刻まれ、今もなお語り継がれるべき貴重な遺産と言えるでしょう。

もう一度検索