貨物上屋

貨物上屋とは

貨物上屋（かもつうわや）は、鉄道駅、空港、港湾などの輸送拠点に設けられた、貨物の荷捌き、積み降ろし、一時保管などを目的とした施設です。単に「上屋」と呼ばれることもあります。

倉庫との大きな違いは、その構造にあります。倉庫が壁で囲まれた密閉空間であるのに対し、貨物上屋は開放的な構造が特徴です。壁がないか、一部の側面にのみ壁が設けられていることが多く、柱と屋根だけの簡素な構造のものも存在します。

各輸送拠点における貨物上屋

鉄道駅

鉄道駅では、貨物ホーム上や駅の構内脇に貨物上屋が設置されます。貨物ホーム上家とも呼ばれます。構造は、ホーム側の側面が開放されており、反対側の側面には壁があるものの、荷物の搬入のために一部が開放されていたり、扉が設けられていたりします。様々な形態があり、壁がないものや、一部が倉庫になっているものも存在します。

鉄道における貨物上屋は、英語ではFreight house（アメリカ英語）またはGoods shed（イギリス英語）と呼ばれます。

空港

空港では、滑走路や駐機場の近くに貨物上屋が設置され、地上輸送と航空機との間の荷捌き、取り回し作業に使われます。航空コンテナは、航空機の形状に合わせて特殊な形をしており、強度も低いため、地上輸送と航空輸送の間で一貫輸送されることは多くありません。そのため、地上輸送から航空コンテナへ、またはその逆の荷物の詰め替え作業が、貨物上屋において行われます。

港湾

港湾では、岸壁の後背地に貨物上屋が設けられ、地上輸送と船舶との間の荷捌き、取り回し作業に使われます。港湾法では港湾施設の一つとして位置づけられています。

海上コンテナは、トラックや鉄道で一貫輸送されることが一般的であるため、コンテナ化が進んだ現代では、貨物上屋における作業は減少傾向にあります。しかし、在来型の貨物船で運ばれる貨物や、複数の荷主の貨物を1つのコンテナに詰め合わせて輸送する場合などでは、貨物上屋での作業が必要となります。

輸送形態によって、荷主から船へ貨物を直送したり、一旦港の倉庫で保管したりするため、陸上輸送や保管、船積みに関する費用や責任の所在は様々です。例えば、「本船直背後上屋受けエプロン出し」という形態では、貨物上屋まで貨物を運び込む責任は荷主にあり、上屋から船積みに関する責任は船会社にあります。上屋内部での管理責任はさらに細分化されています。

このように、貨物上屋は海陸一貫輸送業務における責任分界点となることがあります。

外国貨物を扱う貨物上屋の多くは、関税法に基づく保税地域の一種である、保税蔵置場の許可を受けています。

参考文献

港湾荷役機械システム協会 編『港湾荷役のQ&A』成山堂書店、2006年10月。ISBN 978-4425393619。
坂本衛『鉄道施設がわかる本』（初版）山海堂、2004年2月23日。ISBN 978-4381104953。
新村出 編『広辞苑』（第五版）岩波書店〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉、2002年。
河田耕一「小レイアウト向きの貨物ホーム」『シーナリィ・ガイド』（初版）機芸出版社、1974年6月15日。 NCID BB16604767。
河田耕一「小レイアウト向きの貨物ホーム」『鉄道模型趣味』No.119 1958年5月号、機芸出版社。 - 『シーナリィ・ガイド』に収録。

関連文献

鉄道探検隊（隊長：吉川文夫）『鉄道風景懐古(I)』大正出版、1998年10月。ISBN 978-4811706276。

関連項目

旅客上屋
荷物上屋

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