甲子大橋

甲子大橋：渓谷に架かる美しき逆ローゼ橋

甲子大橋は、福島県西白河郡西郷村の阿武隈川に架かる、国道289号甲子道路の一部を担う橋梁です。日光国立公園に属する阿武隈川最上流部の渓谷に位置し、谷底からの高さは約60mにもなります。甲子トンネルと共に甲子道路の主要な構造物として、その美しい姿を見せています。

建設の背景と景観への配慮

1999年度に事業が開始され、2003年に完成、2008年9月21日に開通しました。建設にあたっては、コスト削減と機能向上のため「VE（バリュー・エンジニアリング）検討委員会」と「景観検討委員会」が設けられ、架橋条件、構造、材料などが詳細に検討されました。その結果、合理化少数鈑桁橋とPC床版、耐候性鋼が採用され、支柱補強材であるK型鋼を省略することで、より洗練された景観を実現しています。

工事の遅延と技術的挑戦

当初は2002年10月に完成予定でしたが、上部工工事最終確認時の測量で、架設された橋桁の水平方向のずれが判明しました。原因は、工事業者がアーチリブを連結する横支材を誤った形状で製作し、そのまま無理に橋桁を架設したことでした。この問題を受け、工事業者からの損害金徴収と約1年間の工期延長を経て、是正工事が行われました。

是正工事は、架設された補剛桁と支柱を撤去し、誤った形状の横支材を正しいものに交換し、再度撤去した補剛桁と支柱を再架設するという、当時日本国内で前例のないものでした。「アーチ橋梁技術検討会」による検討の後、慎重に施工されました。この一件以降、事業者の工事入札参加条件は厳格化されています。

橋の概要

形式: 鋼3径間連続上路ローゼ橋（側径間は2主鈑桁橋）
活荷重: B活荷重
橋長: 199.000 m
支間割: (28.200 m + 142.000 m + 27.200 m)
アーチ支間: 134.000 m
アーチライズ: 21.000 m
総幅員: 9.700 m（ローゼ部）
有効幅員: 8.500 m（ローゼ部）
車道幅: 8.500 m（ローゼ部）
車線幅: 3.250 m
歩道: なし
橋台: 逆T式橋台（A1橋台は直接基礎、A2橋台は深礎杭基礎）
アーチ拱台: 直接基礎
床版: プレストレスト・コンクリート床版
施工: 矢田工業
架設工法: ケーブルエレクション斜吊り工法
平面線形: 直線 - 曲率半径1500 m
縦断勾配: 3.0 %
* 横断勾配: 1.5 %

ふくしまの橋カード

2017年11月からは、福島県が配布する「ふくしまの橋カード」のNo.5に選出され、道の駅しもごうで配布されています。橋を訪れた記念として、ぜひ手に入れてみてください。

近隣の橋

甲子大橋のすぐ隣には、雪割橋が架かっています。合わせて訪れてみるのもおすすめです。

甲子大橋は、その美しい景観と建設における技術的な挑戦から、多くの人々に愛される橋梁です。周辺の自然と調和したその姿は、訪れる人々を魅了し続けています。

もう一度検索