甲寅図書館

甲寅図書館の歴史と運営

甲寅図書館（こういんとしょかん）は、愛知県半田市に存在した私設図書館であり、1914年に開館してから1975年までの間、約60年の歴史を持ちました。この図書館は、地域の青年たちによる読書会である甲寅読書会（こういんどくしょかい）が運営していました。

設立の経緯

甲寅図書館は、1914年2月7日に安養寺の住職、横井是旭の主導の下に設立されました。当初は約20名の会員が参加しており、その多くは地域の若者たちでした。甲寅読書会は、会費や寄付金を元手に書籍を購入し、図書館としての機能を持つようになりました。毎月の例会では活発な意見交換が行われ、毎年1月には新年祝いの大会が開催され、多くの地元の人々が参加していました。

横井住職の離任とその後

1933年、横井住職が他の寺院に異動することになり、図書館の運営には新たなリーダーが必要となりました。その後も甲寅図書館は成長を続け、1939年には半田市からの補助金を受けて運営されるようになりました。また、図書館は記録上、1952年には国立国会図書館の館長が視察に来るなど、名声を高めていきました。

戦後の活動

戦後も甲寅図書館は活発な活動を続け、1946年には著名な教育者を招いた講演会を行いました。1947年には組織の歴史をまとめた『甲寅読書会付属図書館沿革誌』が出版され、会員数は160人を超え、蔵書も増加していきました。しかし、同年に設立された公立の半田市立図書館が地域に新たな図書サービスを提供し始めると、甲寅図書館もその影響を受けていくことになります。

甲寅読書会の役割と名士たちの関与

甲寅読書会は地域の名士を招いた講演会を頻繁に開催し、名誉会員として多くの著名人がその名を連ねました。教育者や政治家、新聞記者など様々な分野の人々が参加し、地域の文化の発展に寄与しました。図書館自体は寄付金によって運営されており、地域の人々の支持を受けていました。

終焉とその影響

1974年には甲寅読書会の60周年を祝う記念イベントが開催されましたが、その後1975年ごろには活動を休止しました。甲寅図書館の閉館は地域文化にとって大きな損失となりましたが、長い歴史を通じて多くの人々に読書の楽しさを伝え、多くの若い世代を育成したその功績は、今でも地域に残っています。甲寅図書館は、単なる図書館ではなく、地域の人々が一堂に会し、知識を共有する中心的な存在だったのです。

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