男の子の名前はみんなパトリックっていうの

『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』：ヌーヴェルヴァーグ以前のゴダール作品

ジャン＝リュック・ゴダール監督による1957年製作のフランス映画『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』（原題：Charlotte et Véronique ou Tous les garçons s'appellent Patrick）は、彼の初期作品として知られています。この短編映画は、ゴダール監督の後のキャリアを決定づける要素を含む、彼の才能の片鱗を見ることができる、重要な作品と言えるでしょう。

ロメールとの共同制作とヌーヴェルヴァーグへの布石

本作は、エリック・ロメールとの共同制作という興味深い背景を持っています。ロメールは、ゴダールよりも先に映画界で活動しており、ゴダールはロメール作品に俳優として出演した経験があります。本作は、ロメールが脚本を執筆し、ゴダールが監督を務めた、いわば両者のコラボレーションによる作品なのです。後にヌーヴェルヴァーグを代表する監督となる二人ですが、この時点ではまだ処女長篇を発表しておらず、本作は彼らの初期実験的な試みのひとつと言えるでしょう。

ロメールとゴダールによる共同制作は、この作品だけにとどまりません。『紹介、またはシャルロットとステーキ』（ロメール監督）、『ヴェロニックと怠慢な生徒』（ロメール監督）、そして『シャルロットとジュール』（ゴダール監督）を含む、シリーズ作品として制作されました。これらの作品群は、ヌーヴェルヴァーグ運動の先駆けとなる、実験的なスタイルとテーマを共有している点が特徴です。

パリを舞台にした軽妙なラブストーリー

映画は、パリのアパルトマンをシェアするシャルロットとヴェロニックという二人の女子学生の物語を描きます。リュクサンブール公園で、二人は偶然同じ男性、パトリックに遭遇し、それぞれにアプローチされます。しかし、後日二人が街でパトリックを目撃すると、彼が全ての女性に対して同じようなアプローチをしていることに気づきます。この出来事が、物語にユーモラスな展開をもたらします。

ゴダール独特の演出スタイルはまだ明確には現れていませんが、簡潔で洗練されたストーリーテリングと、パリの街並みを効果的に使った映像表現は、後の彼の作品に通じるものがあります。また、本作は、ゴダール監督の初期作品ながら、すでに彼の鋭い観察眼と、人間関係に対する独特の視点を感じさせる内容になっています。

作品データとその後

本作は、白黒の35ミリフィルムで撮影され、上映時間は約21分と短編映画です。キャストには、ジャン＝クロード・ブリアリ、アンヌ・コレット、ニコル・ベルジェなどが名を連ねています。現在では、『クライテリオン・コレクション』版DVDに収録されているため、比較的容易に鑑賞することができます。これは、ゴダールの初期作品を理解する上で、非常に重要な機会と言えるでしょう。

『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』は、ヌーヴェルヴァーグ以前の、若きゴダールとロメールの才能が凝縮された作品です。短いながらも、彼らが後に築き上げる独自の映画世界を予感させる、魅力的な短編映画と言えるでしょう。 この作品を通して、彼らの初期の映画的実験と、ヌーヴェルヴァーグ運動の萌芽に触れることができる貴重な機会と言えるでしょう。

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