紹介、またはシャルロットとステーキ

エリック・ロメール監督の隠れた名作『紹介、またはシャルロットとステーキ』

1961年、フランスで公開されたエリック・ロメール監督の短編映画『紹介、またはシャルロットとステーキ』（原題：Présentation ou Charlotte et son steak）。この作品は、ヌーヴェルヴァーグの巨匠として知られるジャン＝リュック・ゴダールが、若き日に主演を務めたことでも知られています。1951年に撮影されたにもかかわらず、公開は10年後。その背景や、映画の内容、そしてヌーヴェルヴァーグとの関わりについて、詳しく見ていきましょう。

ヌーヴェルヴァーグ以前のロメールとゴダール

ロメール監督は、1948年から「シネクラブ・デュ・カルティエ・ラタン」を主宰し、映画上映会で解説を行うなど、熱心な映画活動を行っていました。1950年には、仲間たちと映画雑誌『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』を創刊。同時に、短編映画製作にも着手します。当時、ロメール監督は30歳、ゴダールは20歳でした。本作は、ロメール監督がゴダール主演で撮影した作品の一つであり、ゴダールの初期作品の中でも貴重な記録となっています。ゴダールは本作では、おなじみのメガネではなく、くせ毛をそのままに、後を刈り上げたヘアスタイルです。

本作は撮影後、しばらく仲間内でのみ上映されるサイレント映画でした。しかし、1957年にゴダールが続編となる『シャルロットとヴェロニク、あるいは男の子の名はすべてパトリックである』を監督したことがきっかけとなり、ロメール監督も本作を完成させ、公開に漕ぎ着けました。その後も、ゴダールとロメールはそれぞれシリーズ作品を制作し、新進気鋭の俳優たちを起用することで、フランス映画界に大きな影響を与えていきます。

公開までの道のりとアフレコ

10年もの歳月を経て、本作が公開された背景には、ヌーヴェルヴァーグの勃興があります。ヌーヴェルヴァーグの代表的な監督であるゴダールとロメールの初期作品は、改めて注目を集めることとなります。この機に、本作のアフレコが行われ、ゴダール、ステファーヌ・オードラン、アンナ・カリーナといった当時の若手俳優たちが、声優として参加しました。彼らの友情と才能が、本作を完成させる原動力となったと言えるでしょう。

ストーリー：シャルロットとステーキ、そして期待外れのキス

本作のストーリーはシンプルです。主人公ヴァルテル（ゴダール）は、恋人クララを駅で見送った後、待ち合わせをしていたシャルロット（アンヌ・クードレ、声 ステファーヌ・オードラン）と再会します。シャルロットに招かれたヴァルテルは、キスを期待しますが、シャルロットはコーヒーを淹れ、ステーキを焼くだけで、ヴァルテルの期待は裏切られます。そして、最後にようやくキスをしますが、それはシャルロットにとって、愛情のない行為だったのです。

ヌーヴェルヴァーグへの影響

本作は、ゴダールとロメールの初期作品であり、ヌーヴェルヴァーグに繋がる重要な作品です。本作を皮切りに、ゴダールは後に名作『勝手にしやがれ』を監督し、ロメールも『獅子座』などの長編映画を制作、フランス映画界の新たな時代を切り開いていくことになるのです。 本作は、その出発点として、彼らの才能と、ヌーヴェルヴァーグの誕生を予感させる、貴重な作品といえます。

まとめ

『紹介、またはシャルロットとステーキ』は、ゴダールとロメールの若き日の才能と、ヌーヴェルヴァーグへの足掛かりを示す、見逃せない短編映画です。シンプルながらも奥深いストーリー、そして、公開までの波乱万丈な歴史は、映画史における興味深い一例となっています。 この作品を通して、ヌーヴェルヴァーグという時代背景を感じ取ることができ、二人の監督の才能を再確認できるでしょう。 現在でも、その芸術性と歴史的価値から高い評価を受けており、映画ファン必見の作品と言えます。

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