町田久成

町田久成：博物館創設に情熱を注いだ官僚、そして僧侶

町田久成（まちだ ひさなり / ひさすみ）は、1838年（天保9年）に薩摩藩士の家に生まれました。幼名は民部、号を石谷と称しました。激動の幕末から明治維新にかけて、官僚、そして僧侶として活躍した人物です。

19歳で江戸の昌平坂学問所に学び、有馬新七と出会います。帰郷後は御小姓組番頭、大目付として藩政に携わり、薩英戦争にも参加しました。その後、薩摩藩開成所の設立にも関わり、禁門の変では六郷隊を率いて戦いました。

1865年、町田は薩摩藩英国留学生の一員としてイギリスへ留学します。ロンドン大学で学び、西欧の文化や制度に触れ、特に博物館事業の重要性を認識しました。帰国後は、大久保利通や西郷隆盛らの武力討幕の方針に反対しますが、明治政府では外国事務掛、長崎裁判所判事などを歴任し、参与職外国官判事、外務大丞を務めました。

1870年、大学大丞に異動すると、田中芳男との再会がきっかけとなり、日本初の博物館創設計画が始動します。文部省博物局を設立し、「古器旧物保存方」や「集古館」の建設を提言、1873年には内山下町博物館が開館しました。町田は、博物館の初代館長として、海外に流出する美術品の保護や、博物館のコレクション充実に尽力しました。

博物館事業に情熱を注ぐ一方で、町田は美術品に対する深い造詣を持ち、自らも書画篆刻を嗜みました。特に和楽器に関心があり、祇園の茶屋で古い琴に魅了され、芸妓ごと身請けした逸話は有名です。音楽への造詣も深く、横笛を学び、内山下町博物館では舞楽や管弦の会を催しました。

また、その人間味あふれるエピソードも数多く残されています。例えば、明治天皇の銀婚式に乞食坊主の姿で参上したり、骨董商からの依頼をユーモラスに断ったり、鑑定を依頼された際に「2万5000円を布施すれば立派な奉書紙に書いてやる」と答えた話などは、彼の独特な人となりを伝えています。

1882年、町田は東京帝室博物館（現在の東京国立博物館）の初代館長に就任しましたが、同年10月には辞職します。その後、園城寺光浄院の住職として出家し、僧侶として新たな道を歩み始めました。1893年には、シカゴ万博と万国宗教会議に参加し、国際的な視野も持っていたことが伺えます。

1897年、町田は療養先の寛永寺明王院で生涯を閉じました。彼の功績を称え、1912年には東京国立博物館の庭園に顕彰碑が建立されました。町田久成は、日本の博物館の礎を築き、美術品の保護に尽力しただけでなく、その独特な人柄で多くの人に愛された人物でした。

町田久成の主な業績

薩摩藩英国留学生としてイギリスに留学
東京国立博物館の初代館長
博物館設立に尽力し、美術品の保護に貢献
園城寺光浄院の住職として仏教普及に貢献
和楽器、書画篆刻、音楽に造詣が深い

町田久成の人柄

ユーモアがあり、機知に富んだ人物
美術品への深い愛情と鑑定眼を持つ
型破りな行動や逸話が多い
官僚、僧侶として多才な活躍

関連情報

町田久成の顕彰碑が東京国立博物館に建立。
鹿児島中央駅前に銅像が建てられている。
墓所は滋賀県と東京都にある。

町田久成は、日本の近代化において重要な役割を果たした人物の一人です。彼の情熱と業績は、今もなお私たちの心を揺さぶり、その生き方は多くの人々に影響を与え続けています。

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