画帖

画帖（がじょう）とは、肉筆画の一形態であり、複数の絵をまとめて一冊に仕立てたものです。具体的には、個別に描かれた小画面の絵を、折り本形式や綴じ本形式で台紙に貼り付け、一冊にまとめたものを指します。これは、いわば現代の画集や作品集のような役割を果たしていました。

画帖の制作には、主に二つのパターンが見られます。一つは、すでに完成している別々の絵を台紙に貼り付けて綴じる方法です。この場合、画家はまず個別に絵を制作し、それらを後から画帖としてまとめ上げます。もう一つは、予め画紙を綴じた台紙に、画家が直接絵を描き込んでいく方法です。この場合、画帖そのものが制作のキャンバスとなり、画家は最初から画帖を意識して制作を進めます。

画帖に描かれる内容は、下絵、写生、席画などが多く見られます。下絵は、本画を描く前の準備段階として、構図や色彩などを確認するために描かれます。写生は、自然や人物を観察し、その姿を記録するために描かれます。席画は、宴席などで即興的に描かれるもので、その場の雰囲気を捉えたものが多く、これらの絵は、画家が自身の画技を磨いたり、アイデアを練ったりする上で重要な役割を果たしました。

画帖には、両面に絵があるものと、片面のみのものがあります。両面に絵があるものは、折り本形式で綴じられていることが多く、ページをめくるようにして鑑賞します。片面のみのものは、綴じ本形式で綴じられていることが多く、一枚ずつ鑑賞するのに適しています。これらの画帖は、絵画の手本として、あるいは個人の鑑賞用として制作されました。特に、円山派、四条派、文人画派は、この形式の作品を数多く残しており、当時の画壇における画帖の普及と重要性を示しています。

画帖は、単なる絵画のコレクションとしてだけでなく、当時の絵画技術や画家の思想を知る上で貴重な資料となっています。また、画帖を通じて、当時の人々の美意識や生活様式を垣間見ることができます。画帖は、絵画史だけでなく、文化史においても重要な位置を占める存在と言えるでしょう。

関連事項

肉筆浮世絵：肉筆で描かれた浮世絵で、画帖にもしばしば用いられます。
卓上芸術：画帖は、手元で鑑賞するのに適した芸術作品であり、卓上芸術の一種と見なすことができます。

参考文献

* 馬頭町広重美術館編 『馬頭町広重美術館開館記念特別展 広重肉筆画名作展 ー青木コレクションを中心にー』 馬頭町広重美術館、2000年

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