文人画

文人画（ぶんじんが）とは

文人画は、中国において職業画家が描く院体画に対し、文人が余技として行う絵画を指します。この芸術形式は琴棋書画の「書」との関連が深いです。文人画の概念は、中国だけでなく近代以前の朝鮮や日本にも広まり、その影響は大きいものでした。

文人画の変遷

もともと「文人の描いた絵」を示す言葉としてスタートした文人画は、次第に文人画風の絵画全般を指すようになりました。そのため、特に中国と日本では文人画（または南画）の意味に違いが生じ、時代によってもその解釈に変化があります。中国における文人画は、董其昌の定義により明確な形を持ちました。彼はこの芸術形式を通じて精神的な価値を求め、院体画に対する対抗軸として位置づけました。担い手は士大夫階級が中心でした。

中国の文人画

中国の文人画は、董其昌によって定義されることが多いです。彼は、技術にこだわる職業画家に対し、内面的な表現を重視しました。院体画の系譜は北宗画と結びついており、文人画は南宗画と関連付けられます。この見解は中国絵画史に大きな影響を与えましたが、董の理論には自己の立場を守るための恣意性も含まれています。文人画の起源を唐代の王維に遡らせ、宋代に士大夫によって発展したと考えられています。また、元末四大家の時代に様式化が進むことで、文人画はさらなる深みを持つようになりました。

文人画は時に士夫画とも称され、その表現は蘇軾の文の中にも見出されます。特に、この語は以下の三つの観念に分類されます。
1. 画工の中でも特に学問や教養を深めた画家による作品。
2. 画を士大夫の余興や気晴らしとして捉える見解。
3. 制度上士大夫作家と職業画工を区分する考え方。

このように文人画は、士大夫階級に自らを位置づけ、別の価値基準を提起することで、技術だけでなく精神性や内面性を重要視しています。古代からの影響を受けながら、北宋時代に至るまで独自の理論体系として展開しました。

日本の文人画

日本において文人画は室町時代に伝わり、江戸時代の中頃から盛んに描かれるようになりました。この時期、「南画」という言葉がしばしば使われていました。初期の文人画家には祇園南海、柳沢淇園、彭城百川などが名を連ねており、江戸時代には池大雅、与謝蕪村、谷文晁らが代表的です。明治時代以降、滝和亭や松岡環翠、渡瀬凌雲が著名になり、さらに岡倉天心やアーネスト・フェノロサが美術界に影響を与えましたが、次第に評価が低くなり、富岡鉄斎や野口小蘋らが活躍するも衰退してしまいました。

文人画はその歴史や形式だけでなく、時代背景や文化的背景を反映し、私たちが理解するための重要な鍵を提供しています。

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