異邦人 (映画)

アルジェの太陽の下で：映画『異邦人』の物語

1967年、イタリアで製作された映画『異邦人』（原題：Lo Straniero）は、フランスの作家アルベール・カミュの同名小説を映画化した作品です。第二次世界大戦前のアルジェリアを舞台に、平凡な青年ムルソーの物語が、静謐ながらも衝撃的な展開で描かれています。

物語は、ムルソーの母親の死から始まります。アルジェから遠く離れたマレンゴの養老院で亡くなった母親。ムルソーは、暑く倦怠感の漂う通夜の間、タバコを吸ったりコーヒーを飲んだり、周囲の弔いの言葉にも無関心に過ごします。葬儀を終えアルジェに戻ったムルソーは、日常の生活に戻ります。かつての同僚マリーと映画館に行き、時間を過ごしたり、レイモンという、いかがわしい噂のある男と付き合ったりと、淡々と日々を過ごします。

レイモンは、ある日アラビア人の女性を暴行する事件を起こします。警察の事情聴取に、ムルソーはレイモンの指示通りに証言します。一方、マリーはムルソーに結婚を申し込んできますが、ムルソーは「どちらでもいい」と答えます。

ある日曜日、ムルソー、マリー、レイモンは海岸へ出掛けます。そこで、レイモンが以前暴行した女性の兄弟を含むアラビア人グループと遭遇し、口論になります。レイモンが刺されたのをみたムルソーは、彼を病院へ連れて行き、再び海岸に戻ります。まぶしい太陽の下、ムルソーは再び現れたアラビア人に向けて、持っていたピストルを発砲します。

この殺人事件によって逮捕されたムルソーは、裁判にかけられます。裁判では、母親の死後すぐに映画を見に行ったり、マリーと過ごしたことを淡々と証言します。検察官や陪審員は、ムルソーの母親に対する無関心な態度や、殺人事件後の冷静さを不自然に感じ、ムルソーは死刑を宣告されます。

獄中で神父の説得を受けますが、ムルソーは神の存在や死の意味を理解できません。「誰もがいつか死ぬ」と叫び、死を受け入れることで、ある種の自由を手に入れたかのように、ムルソーは最期を迎えます。

この映画は、カミュの小説が持つ不条理な世界観を見事に映像化しています。ムルソーの感情表現の乏しさや周囲とのズレ、そして社会の矛盾を浮き彫りにすることで、人間の存在や社会の在り方について深く考えさせられます。ムルソーの行動は、現代社会においても、多くの議論や解釈を生み続ける、不朽の名作です。

映画『異邦人』は、単なる犯罪劇ではなく、人間の存在の根源的な問いを投げかける、芸術性の高い作品として評価されています。ムルソーの行動の背景にあるもの、そして彼の最後の言葉が何を意味するのか、観る者それぞれが解釈し、考え続けることができる、そんな映画なのです。北アフリカの強い日差し、そしてムルソーの淡々とした語り口が、観る者に強い印象を残します。

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