疋田陰流

疋田陰流（ひきたかげりゅう）について

疋田陰流は、上泉信綱の甥とされる疋田景兼の流派であり、主に新陰流に関連する武道の一つです。この流派は特に、山田浮月斎という弟子によって体系化され、独自の流派として名を馳せることとなりました。日夏弥助の著書『本朝武芸小伝』（1714年）では、山田浮月斎と寺沢半平がこの流派の主要な弟子として記録されています。

山田浮月斎と疋田陰流

山田浮月斎は、疋田景兼の主要な弟子であり、彼によって疋田陰流が確立されました。三上元龍の記述によれば、この流派は疋田豊五郎の弟子である山田によって新たに設立されており、疋田景兼の流派との区別がなされていました。また、富永堅吾の『剣道五百年史』では、疋田の名は門弟や周囲の人々によって広められたと指摘されています。このように、流派の名は時代とともに変わり、流派の正確な継承者や地域については明確に分かっていない部分があります。

疋田景兼の武術

疋田景兼が伝えた剣術は、主に剣術を基本としながらも、槍術や薙刀術といった長柄武器を含む幅広い内容を持っていました。彼自身は、流名を新陰流や新陰之流とも称していました。大部分の継承者は剣術に重点を置きましたが、猪多重良の系統では「疋田流」や「新陰疋田流」と呼ばれることが多く、槍術や薙刀術に特化した拠点を持つことで知られています。流派名は多岐に渡り、新陰之流や愛洲新陰流なども含まれ、上泉信綱の師である愛洲移香にルーツを持つとも言われています。

地域的伝承

疋田陰流は特に西日本に広まりました。岡山や広島、鳥取といった中国地方や、九州の福岡や熊本にその足跡が見られます。江戸時代には、愛洲陰流が関東で伝承され、水戸藩に流入し真陰流として知られるようになりました。

また、疋田景兼の直接の弟子には、多くの著名な武士が含まれています。特に、真里谷城主の真里谷清雲や岡山藩の香取左衛門、広島藩の寺沢半平などが名を馳せ、各地域で独自の流派が形成されました。特に、猪多伊折佐による疋田流槍術は広く知られ、岡山や鳥取を越えて四国や九州、関東などにも伝播しています。

現在の疋田陰流の系統

現在伝承されている疋田陰流は、複数の系統に分かれています。まず、肥後藩に伝わる系統では、上野左右馬助から始まる系譜が存在し、江戸時代には様々な師範家に分かれました。特に和田家が現代にまで流派を継承し、近代剣道の稽古法を早くから取り入れたことで知られています。さらに、鳥取藩の系統では猪多伊折佐が有名ですが、現在は新陰疋田流の槍術は絶えてしまいました。

尾張の春風館でも疋田の系統が伝えられ、独自の大太刀を使った技が行われています。一方、古武道統成会などの団体も疋田陰流を学んでおり、現代においても多様な形で武道が継承されています。

武道としての深い歴史を持つ疋田陰流は、今なお新たな継承者によって受け継がれ続けています。

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