疑義照会

疑義照会とは

疑義照会（ぎぎしょうかい）とは、医師や歯科医師が発行した処方箋の内容について、薬剤師が疑問点や不明な点を確認する行為です。具体的には、処方箋に記載された薬剤名、用法、用量、投与日数などが適切かどうかを、処方医に問い合わせて確認します。この確認作業は、患者さんの安全な医療提供に不可欠であり、薬剤師の重要な職務の一つです。

疑義照会の重要性

処方箋には、重複投与、禁忌、薬物相互作用など、患者さんの健康に悪影響を及ぼす可能性のある情報が含まれている場合があります。薬剤師は、これらのリスクを未然に防ぐために、処方箋の内容を詳細に確認し、必要に応じて医師に疑義照会を行います。疑義照会は、調剤業務のすべての段階、特に処方監査の段階で実施されます。薬剤師法では、疑義照会を行わずに調剤を進めることを禁じており、処方医も薬剤師からの問い合わせに適切に対応することが義務付けられています。

疑義照会の法的根拠

薬剤師法第24条では、「薬剤師は、処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」と規定されています。また、薬剤師は、疑義照会の内容を処方箋の備考欄に記録する義務があります。記録事項には、照会日時、照会先名、処方医名、照会内容、担当薬剤師名などが含まれます。薬剤師は、処方箋の内容を無断で変更することはできず、変更が必要な場合は必ず医師の同意を得なければなりません。

処方監査と疑義照会

処方監査とは、薬剤師が調剤を行う前に、処方箋の記載事項や患者情報を確認する業務です。具体的には、患者の氏名、年齢、性別、医薬品名、剤形、用法、用量、投与日数などが適切か、患者の薬歴やアレルギー情報などを確認します。処方監査の結果、疑義が生じた場合には、必ず医師に疑義照会を行います。

疑義照会の具体的な内容

疑義照会の対象となる内容は多岐にわたります。以下はその一例です。

処方薬情報の不備：薬剤名、規格、剤形、用法などが不明確な場合。
薬剤特性に関する疑問：粉砕や混合ができない薬剤、規格変更で代替可能な薬剤など。
効能効果に関する疑問：処方薬の選択、過去の処方からの変更、単独投与や第一選択薬としての妥当性。
用法用量に関する疑問：過量・過少投与、小児や高齢者への配慮、休薬期間、用法用量の変更。
薬物相互作用に関する疑問：併用禁忌、重複投与、薬効が相反する薬剤の併用。
患者の希望に関する疑問：後発医薬品の希望、好みの剤形、高額な薬剤の回避。
処方もれ・削除もれに関する疑問：必要な薬がない、中止するはずの薬が処方されている。
副作用歴に関する疑問：過去に副作用を起こした薬剤が処方されている。
疾患や生理状態に関する疑問：特定の疾患や生理状態（妊娠など）で禁忌や慎重投与が必要な薬剤が処方されている。
服薬困難な剤形や時間帯に関する疑問：苦手な剤形、服用時間帯の制約。
* その他：保険算定上の問題、在庫がない場合など。

これらの問題点以外にも、患者さんが医師に伝えていない情報がある場合など、薬剤師は医師に対して疑義照会を行う必要があります。

疑義照会の方法

疑義照会は、一般的に電話またはファクシミリで行われますが、医療機関の規模や方針によって、院内ルールに準じて行われることが一般的です。

疑義照会の記録

疑義照会の結果、処方箋を修正する必要がある場合は、医師が二本線で修正し、訂正印を押す必要があります。薬剤師は、疑義照会の内容を処方箋の備考欄に詳細に記録し、調剤記録として適切に保管します。

疑義照会の効果

疑義照会は、患者の医療費削減にも貢献しています。鹿村恵明らの2016年の報告によると、疑義照会による医療費削減効果は133億円に及んだとされています。また、業務支援システムを導入することで、疑義照会を含む調剤業務の効率化が図られています。さらに、処方箋に検査値を併記することで、経験の浅い薬剤師でも疑義照会すべき処方箋の見落としを減らすことができるという報告もあります。

まとめ

疑義照会は、薬剤師が患者さんの安全を守り、より適切な薬物治療を提供するために不可欠な業務です。薬剤師は、処方箋の内容を詳細に確認し、疑問点があれば必ず医師に確認を行う責任があります。疑義照会は、患者さんの健康を支える上で非常に重要な役割を果たしています。

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