発生主義

発生主義会計の基本概念

発生主義（はっせいしゅぎ、英: accrual basis）は、会計における基本的な原則の一つです。この原則は、現金の収入や支出に依存せず、経済的な事象の発生や変化に基づいて収益や費用を認識することを求めます。発生主義は、収益及び費用を現金が動く日にむしろ焦点を当てる現金主義と対照的な概念です。

発生主義会計の具体例

例えば、ある工場の運営にかかる電気代が3か月ごとに支払われる契約だと仮定しましょう。この場合、発生主義に基づくと、実際の支払いが行われるかどうかにかかわらず、毎月生産活動に関連する電力の消費が費用として計上されます。これは、電気の消費が発生している時点で、資源の消費とその生産活動が正確に反映されることを意図しています。

また、耐用年数が10年の機械を100万円で購入した場合、発生主義に従えば、最初の1年に100万円を支払ったとしても、その年の経済的な資源消費はその10分の1、すなわち毎年10万円として計上されます。この処理がいわゆる「減価償却」です。

発生主義と他の原則との対比

現金主義では収益や費用の認識が実際の現金の受け渡しを基準にしていますが、発生主義では現金が動かない場合でも、対象となる経済事象の発生に基づいて収益や費用を認識します。ただし、慎重の原則に基づき、未実現収益の計上は禁じられております。この結果、発生主義によって一般的に認識される勘定科目には、前払費用、未払費用、未収収益、減価償却費、繰延資産などが含まれます。これらは貸借対照表（B/S）上で経過勘定として扱われます。

会計書類の作成

発生主義に基づいて作成された損益計算書は、企業の実際の経済活動を反映していますが、現金の収支についてはキャッシュフロー計算書で別途把握する必要があるため、二つの報告書は重要な役割を担っています。

会計原則の歴史的変遷

発生主義と現金主義、さらに実現主義は、会計の歴史において時代のニーズを受けて変化してきました。まず現金主義が登場し、次に発生主義が広まっていきました。その後、発生主義の弱点を補う形で実現主義が導入されました。この変遷は、企業活動が一時的なものであることから継続的な経済活動に移行し、投資家保護が重要な視点として強調されたことを示しています。

仕訳の例

発生主義に基づく会計処理は、具体的な仕訳によって表されます。例えば、収益の認識には、サービス提供時や現金受領時が考慮され、費用の認識ではサービスの受取時や現金の支払時が検討されます。仕訳記録においては「前払保険料」や「未払家賃」などの用語が使用され、前払費用は流動資産、未払費用は流動負債として区別されます。

以上のように、発生主義は企業の経済活動をより正確に反映し、財務状況を理解する上での重要な手法です。

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