登檣礼

登檣礼と登舷礼の儀式

登檣礼（とうしょうれい）とは、帆船の出航時に船員が帆桁に集まり、見送りに来た人々に感謝の意を示す伝統的な儀式です。この行為は、帆船の世界において最高の礼式とされており、特に重要な意味を持ちます。登檣礼は、乗組員が敵意を持たず、平和的に出航する意向を周囲に示すためのものであり、礼砲と同様の目的を果たします。

日本においては、独立行政法人航海訓練所が所有する「日本丸」や「海王丸（2代目）」が訓練航海を行う際に、訓練生による登檣礼が実施されます。このような儀式は、日本の海洋文化において重要な役割を果たしています。また、かつて大阪市が所有していた帆船「あこがれ」でも、大阪市消防の出初式において登檣礼を見ることができ、地域の伝統行事とも関連しています。

登舷礼の重要性

一方、エンジンで動く船舶には帆桁が存在しないため、最高の礼式として「登舷礼（とうげんれい）」が用いられます。この儀式では、空いている乗員が甲板に集まり、直立して港にいる人々からの見送りを受けます。特に軍艦が他国の港に入港する際には、正式な服装をした乗員が敬礼を行い、乗船者が敬意を表します。また、航空母艦では、戦闘準備を行わないことを示すために艦載機を飛行甲板上に配置することが一般的です。

アメリカにおいては、真珠湾に入港する全ての船舶が登舷礼を行うという伝統が存在します。このような儀式は、海軍の文化に深く根付いており、見送りや周囲への感謝を示す大切な行為とされています。そして、日本の海上自衛隊においても「登舷の敬礼」と称され、特定の艦艇や観艦式において行われることが定められています。

登舷礼の手順は、らっぱまたは号笛を使って「気を付け」を命じることから始まり、その後、全員が舷側または甲板上に整列します。幹部自衛官と准尉は敬礼を行い、曹長以下の自衛官も姿勢を正して敬礼をすることが求められます。敬礼は、他の艦艇との接近時に約45度の方位から始まり、遠ざかる際に継続されますが、距離や速力に応じてそのタイミングは柔軟に調整されています。

さらに、港から出航する際には厳密には登舷礼ではありませんが、乗組員と見送る隊員が互いに帽子を振って感謝の意を表す「帽振れ」が行われることもあります。このように、さまざまな儀式や行動を通じて、船舶や乗組員が感謝と敬意を表す文化が根付いているのです。

登檣礼や登舷礼は、単なる儀式にとどまらず、海の文化や伝統、さらに人々とのつながりを深める大切な行為であると言えるでしょう。これらの礼式は、海上の安全と平和を願う象徴でもあり、未来に向けて継承していくべき重要な文化です。

もう一度検索