登記事項証明書

登記事項証明書について

登記事項証明書とは、日本の登記所が発行する公的な書類で、登記記録に記載された事項を証明するものです。登記記録は、不動産、商業（法人）、後見、債権譲渡、動産譲渡など、様々な分野の権利関係や事実を記録しており、これらの情報を証明するために登記事項証明書が発行されます。本稿では、これらの登記事項証明書について、その種類や内容、請求方法、手数料などを詳しく解説します。

略語について

説明の便宜上、以下の略語を使用します。

不動産登記準則：不動産登記事務取扱手続準則（2005年民二456号通達）
商業登記準則：商業登記等事務取扱手続準則（1964年民甲472号通達）
債権通達：1998年民四1822号通達
動産通達：2005年民商2291号通達
概要通達：2005年民商2290号通達
役員：取締役、会計参与、監査役、代表取締役、特別取締役、委員、執行役、代表執行役、会計監査人

導入の沿革

登記制度は、かつては紙の登記簿に記載する方法で行われていました。その際、登記簿に記載された事項の証明として登記簿謄抄本が発行されていました。現在では、登記事務がコンピュータ化されたことにより、登記事項証明書が発行されるようになりました。ただし、コンピュータによる取り扱いに適合しないものについては、現在でも登記簿謄抄本が発行されます。

登記事項証明書の種類

不動産登記

全部事項証明書：登記記録の全ての事項を証明する書面です。
現在事項証明書：現在効力のある事項を証明する書面です。
何区何番事項証明書：権利部（甲区、乙区）の特定の区に関する事項を証明する書面です。
所有者証明書：現在の所有者の氏名または名称と住所を証明する書面です。
一棟建物全部事項証明書：一棟の建物に属する全ての区分建物の登記記録を証明する書面です。
一棟建物現在事項証明書：一棟の建物に属する全ての区分建物の現に効力のある事項を証明する書面です。
閉鎖事項証明書：閉鎖された登記記録に係る部分を証明する書面です。
登記事項要約書：不動産の表示や所有権に関する主要な事項を記載した書面です。

商業登記

現在事項証明書：現に効力のある登記事項、会社成立の年月日、役員の就任年月日などを証明する書面です。
履歴事項証明書：現在事項証明書の内容に加え、過去3年間の抹消された事項や変更履歴を証明する書面です。
閉鎖事項証明書：閉鎖された登記記録の事項を証明する書面です。
代表者事項証明書：会社の代表者の代表権に関する登記事項を証明する書面です。
登記事項要約書：現に効力のある登記事項を記載した書面です。

商業登記の証明書には、全部証明書と一部証明書があり、「履歴事項全部証明書」や「閉鎖事項一部証明書」のような形式で発行されます。一部事項証明書は、商号区、会社状態区、請求に係る区について証明したものです。

後見登記等

通常の登記事項証明書：
自己を成年被後見人等、任意後見契約の本人とする登記記録。
自己を成年後見人等、成年後見監督人等とする登記記録。
配偶者や4親等内の親族を成年被後見人等とする登記記録。
保全処分に係る登記記録。
特殊な登記事項証明書：
未成年後見人または未成年後見監督人が、その未成年被後見人の記録を請求する場合。
成年後見人等が、その成年被後見人等の記録を請求する場合。
任意後見契約の受任者が、その任意後見契約の本人に関する記録を請求する場合。
通常の閉鎖登記事項証明書：
自己が成年被後見人等であった閉鎖登記記録。
自己が成年後見人等であった閉鎖登記記録。
保全処分に係る閉鎖登記記録。
特殊な閉鎖登記事項証明書：
相続人等が、被相続人等の閉鎖登記記録を請求する場合。

債権譲渡登記・動産譲渡登記

登記事項概要証明書：譲渡に係る動産・債権を特定するために必要な事項を除いた部分を証明する書面です。
登記事項証明書：動産・債権の譲渡について、登記ファイルに記録されている事項を証明する書面です。
概要記録事項証明書：登記事項概要ファイルに記録されている事項を証明する書面です。

交付請求について

請求権者

不動産登記、商業登記：原則として誰でも交付を請求できます。
後見登記等：通常の証明書は誰でも請求できますが、特殊な証明書は請求権者が限定されています。
債権譲渡登記、動産譲渡登記：登記事項概要証明書は誰でも請求できますが、登記事項証明書は譲渡人、譲受人、利害関係者などに限定されています。

請求情報の内容

請求書には、以下の情報を記載する必要があります。

請求人の氏名または名称
不動産所在事項（不動産登記の場合）
会社名（商業登記の場合）
請求する証明書の種類と通数
手数料
登記所の表示

認証文

登記事項証明書には、登記官による認証文が付され、作成年月日、職氏名、職印が記載されます。認証文は、証明書の種類によって内容が異なります。

手数料

登記事項証明書の交付には手数料が必要です。手数料は、収入印紙で納付するのが原則ですが、オンラインで請求する場合は現金納付も可能です。具体的な金額は、登記手数料令で定められています。

登記情報提供制度

登記事項証明書は紙媒体で発行されますが、登記所が保有する登記情報をインターネットで確認できる「登記情報提供制度」があります。この制度で提供される情報は証明書としての効力はありませんが、登記内容を簡単に確認できる便利なサービスです。また、行政機関への電子申請の際に、登記事項証明書の代わりに照会番号を付記することで手続きを簡略化できる場合があります。

まとめ

登記事項証明書は、不動産取引や会社運営において重要な書類です。この記事を参考に、必要に応じて適切な証明書を取得し、登記情報を有効活用してください。

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