白井慶吉

白井 慶吉（しらい けいきち） は、1882年5月15日にこの世に生を受け、1985年6月2日に103歳の生涯を閉じた、近代日本の重要な牧師の一人です。新潟の廻船問屋である白井勝太郎の三男として生まれ、政治家の加藤勝弥を従兄に、加藤俊子を甥とする家系に連なります。激動の時代を生き抜き、日本基督教団の第5代総会議長という重責も担いました。

信仰への導きは、慶吉が10歳の頃、1892年に訪れます。両親が長老派の日本基督新潟教会（現在の日本基督教団東中通教会）でキリスト教の信仰に触れたことを機に、慶吉自身も巡回牧師であった石原保太郎から幼児洗礼を授かりました。

青年期に入り、1899年に北越商興会付属新潟商業学校（現在の新潟県立新潟商業高等学校）を卒業しました。同年夏には信仰告白を行い、堅信礼を受けて正式に教会員となります。その後、出身教会である新潟教会の日曜学校で教えるなど、早い時期からキリスト教の教育活動に携わりました。

更なる学びを求め、1906年に上京。東京神学社の本科に入学し、当時の重鎮である植村正久から薫陶を受けました。在学中から、キリスト教界の重要な媒体であった『福音新報』の編集業務を手伝うなど、多方面で活躍しました。1909年に東京神学社を卒業すると、牧師としての第一歩を踏み出し、函館教会（現在の日本基督教団函館相生教会）に赴任。そこで按手礼を受け、正式に牧師となりました。

その後、1912年には出身地である新潟へ戻り、母教会である日本基督新潟教会で牧会の任にあたります。さらに1915年には熊本教会へと移り、西日本での牧師としての経験を積みました。

1920年、白井慶吉は信仰と神学の理解を深めるため、渡米を決意します。サンアンセルモ神学校、マコーミック神学校、そして名門プリンストン神学校の大学院で研鑽を積み、その学識をさらに豊かなものとしました。1924年に帰国すると、母校である東京神学社の教授として教鞭を執ることになります。

しかし、その活動の舞台は日本国内にとどまりませんでした。同年、当時の旧満州国大連市にあった大連西広場教会の牧師に就任。広大な満州の地で牧会活動を展開し、満州中会の議長も務めるなど、指導的な役割を果たしました。そのまま大連で終戦を迎え、激動の時代を現地で経験しました。

戦後、1947年2月に大連から引き揚げて帰国しました。同年5月4日、白井慶吉はかつての大連西広場教会に集っていた引揚者たちを中心に、30名の信徒と共に新たな教会を設立することを決意します。こうして誕生したのが、現在の日本基督教団千代田教会です。この教会は、戦後の混乱期における引揚者たちの精神的な支えとなりました。

白井慶吉の教団における貢献は多岐にわたりましたが、特に重要なのは、1958年に日本基督教団の第5代総会議長に就任したことです。これは、第4代議長であった武藤健の後任として、教団全体の運営を担う重責でした。

晩年も精力的に活動を続けましたが、1977年3月4日、長年牧会にあたってきた千代田教会の牧師を引退しました。その長年にわたるキリスト教界への功績が認められ、1978年にはキリスト教功労者として表彰されました。そして、1985年6月2日、103歳という稀に見る長寿をもって、波乱に富んだその生涯に幕を閉じました。白井慶吉の生涯は、明治から昭和にかけての日本の歴史とキリスト教会の歩みと深く結びついており、その牧師としての献身と教団への貢献は長く記憶されるべきものです。

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