白井豊

白井豊：多分野にわたる技術探求者

白井豊（しらい ゆたか、1950年1月17日 - ）氏は、日本の技術界における重要な人物であり、コンピュータプログラマとして知られています。鹿児島県阿久根市に生まれた同氏は、幅広い技術分野でその能力を発揮してきました。

鹿児島大学理学部物理学科で学んだ白井氏は、卒業論文の実験解析に用いたコンピュータに強い関心を抱き、これがきっかけでソフトウェア開発の世界へと進むことを決意します。大学での物理学研究を通じて培われた論理的思考力は、その後のキャリアの基盤となりました。

キャリアの初期段階では、構造計画研究所に入社。ここでは、有限要素法や振動解析といった工学系のソフトウェア開発に携わりました。しかし、マイクロコンピュータが普及し始めるにつれて、活動の幅を急速に広げていきます。メーカーや国の研究所と連携し、通信制御装置の試作品開発や研究目的のコンピュータシステム構築を請け負うなど、様々なプロジェクトに参画しました。この経験を通じて、科学技術計算ソフトウェアのみならず、組み込みシステム、自然言語処理、人工知能といった、それまでとは異なる広範な分野のソフトウェア開発に携わることとなりました。特に、LISPマシンやPascalマシンといった高級言語計算機のCPU制御を専門とするようになり、ハードウェアとソフトウェアの連携に関する深い知識と技術を蓄積していきました。

1980年代後半には、通商産業省（現・経済産業省）主導による国家的な技術開発プロジェクトに深く関与します。1987年に開始された「ソフトウェア環境統合化技術開発計画（FASET）」や、1988年の「システムインテグレーション基盤技術開発計画（SI）」では、プロジェクトリーダーという要職を務めました。これらのプロジェクトでは、日本のソフトウェア産業の基盤強化を目指し、統合化された開発環境やシステム連携技術の研究開発が進められました。また、新構造化モデルの策定や、中小企業の情報化推進に関連する通産省プロジェクトの立ち上げにも尽力するなど、国の技術政策形成においても重要な役割を果たしました。

その後、活躍の場を財団法人林業土木コンサルタンツ（JFEC）に移し、技術研究所の情報処理研究室長として、財団の情報化推進を指揮しました。ここでは、これまでの情報処理技術の知識を林業土木分野に応用する研究に取り組みました。同時に、日本工業大学などで非常勤講師を務め、後進の指導にもあたっています。JFEC在籍中には、集水域の自動認識モデル、崩壊土砂流出シミュレーション、水系自動抽出モデルといった、地理情報や自然環境に関するデータ解析・シミュレーションモデルを考案するなど、新たな分野での技術的貢献を行いました。

財団の解散を経て、白井氏は自身の経験と知見を活かすべく、株式会社創造舎を設立し、その代表取締役に就任しました。現在も、これまでの多岐にわたる技術開発や研究の経験に基づき、様々な活動を展開しています。

その幅広い専門知識は、多数の著書としても結実しています。『データ通信テキスト』、『伝送交換テキスト』といった通信技術に関するものから、『ExcelとVBAによる実用数値解析入門』、『これなら納得C言語へのいざない』、『Visual C#.NETによる明解アルゴリズムとデータ構造』といったプログラミングや数値解析に関する書籍、さらには『動く力学シミュレーション』、『フラクタルで描く魅惑的な画像の世界』といった応用分野、『情報・倫理・知的財産』といったIT社会の基盤に関するものまで、その執筆分野は多岐にわたります。これらの著書は、同氏の技術者としての深さと幅広さを示しています。

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