白十字 (国立市の洋菓子店)

有限会社白十字

有限会社白十字（はくじゅうじ）は、日本の東京都国立市に位置する喫茶店および洋菓子店です。1955年、創業者の山井和夫が銀座の名店「白十字」での修行を経て、国立駅南口の近くに洋菓子店兼喫茶店を開業しました。当初は17坪の小さな店舗でしたが、彼の妻である声楽家の佳代子とともに、新しい洋菓子の創作に励みました。店名やメニューには、音楽にちなんだ名前が多く取り入れられ、「ノクターン」や「コッペリア」、「メヌエット」などの洋菓子が反響を呼びました。

沿革と変遷

1972年、白十字は国立市中1-9-43の国立ビルに本店を移転しました。この同時期に、国立駅北口にケーキ販売の支店もオープンしますが、1985年に山井和夫が逝去します。その後、経営は妻の佳代子が引き継ぎ、長男の山井和恒もフランスでの修行を経て家業に戻ります。彼は母の後を継いで社長に就任し、新しい商品を開発しました。

国立らしいアイデンティティを持つお菓子として、「桜サブレ」や「国立物語」、さらには「くにたちショコラ」、国立駅をイメージしたケーキが名を馳せました。また、音楽にちなんだ菓子も数多く、例えば「モーツァルトケーキ」や「シンフォニー」、「セレナーデ」などが登場しました。

通常営業と文化的拠点

白十字は洋菓子店でありながら、純喫茶としても親しまれています。食事のメニューはサンドイッチやトーストといった軽食に限られていますが、ビールやつまみを持ち込んでパーティーを開くことも時折見られました。特に国立ビル本店は、YAMAHA製のグランド・ピアノがあることで知られ、100席以上のキャパを持つため、定期的な演奏会やイベントも行われてきました。

しかし、2014年には北口店が閉店し、2021年には本店も閉店。翌日から新店舗・ブランコ通り店にて仮営業を開始しました。この新しい店舗は、軽食の提供は行わず、あくまで創業地に戻るための一時的な移転とされています。

社会的評価

白十字は、国立市に存在する多くの文化施設の中でも特に印象深い独自の存在としてリスペクトされています。市民の寄付に対して贈呈される「くにたちStyle」の贈り物として、白十字の焼き菓子が選ばれることもあります。また、アニメーション映画『おおかみこどもの雨と雪』の舞台に登場し、多くの観客が実際にその看板の写真を求めて訪れるなど、作品にも影響を与えてきました。加えて、NHKの番組『小さな旅 さくら道で〜東京 国立市〜』や映画『四月の永い夢』にも取り上げられるなど、全国的にもその名を知られています。

このように、有限会社白十字は単なる洋菓子店ではなく、地域の文化と歴史を育んできた重要な存在として今後も受け継がれていくことでしょう。

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